それから、水島と一緒に蓮の担任に事情を説明した後、水をかけた犯人を一瞬だけ見たらしい水島が、風紀委員と話をしていた。
拓海は、先に教室に戻るように教師から言われたので、一足早く教室に戻る。すると、入り口で待ち構えるようにして立っていた橋本が、拓海を出迎えた。

「ねえ、藤沢君て篠宮君と時々一緒にいるよね?」
「うん。そうだけど、どうかした?」
「ちょっと来て」

そう言って拓海を自分の席に連れて行くと、橋本は一枚のプリントを見せた。
受け取ったプリントは厚手の高級そうな紙で、印刷されている内容を見ると、新聞のようなつくりになっていた。
その見出しは『会長補佐、ついに決定か!?』とある。

「何これ?」
「校内新聞だよ。スクープがあった時に出るんだけど、会長補佐が決まるかもしれないんだって。その予想の一人に篠宮君があがってるんだ」
「えぇっ?」

新聞に目を通すと、『これまで空席だった、会長補佐を迎える準備が整えられている。中瀬会長に近い存在とは一体誰なのか』といった内容のリードがあり、本文に続いていた。

会長補佐を迎える用意があるらしいと情報を入手した記者が、会長補佐に選ばれる条件である「生徒会長に近い存在」に基づいて予想を立てていた。
そこに蓮の名前こそ出てはいなかったが、「中瀬会長と隣接する部屋の人物」とあれば蓮しかいない。反対側に隣接する部屋の副会長は、会長補佐にはならないため、蓮にしか可能性がなかった。

そして、他に候補に上がっているのは、和葉と会長親衛隊の隊長だった。
和葉を予想したのは、以前会長と噂があったことと、彼のために会長自ら食堂の調味料を増やした噂があるからだと書かれている。和葉は風紀副委員長だが、実質的に副委員長の仕事は三枝が行っているので、問題はないようだ。
他にも、悠真と公私ともに仲の良い人物たちは、委員会の委員長や部活の部長など役職があるため、予想から外されていた。

最後に、この記事を書いた記者は平木だとある。
だから、昨日わざわざ拓海の所に来て、あんな予言めいたことを言ったのだろうか。

「藤沢君、篠宮君から何か聞いてる?」
「何も聞いてないよ。会長補佐って、生徒会補佐とは違うのかな?」
「会長補佐は、会長だけを補佐するらしいよ。その時の生徒会長が一人選ぶんだけど、中瀬先輩は誰も選ばないんだと思ってた」
「そうなんだ……。でも、これって本当なのかな?」
「中学の時は、平木先輩のスクープはだいたい本物だった気がするよ」

そう橋本は言っているが、噂をもとに予想を立てていたりもしているので、どこまで信憑性があるのかわからなかった。

「いいなあ、会長補佐……。中瀬先輩は忙しい方だから、もしかしたらプライベートも補佐するようになって、親密になれるかもしれないってみんなが話してたんだ。だから、この記事を見て、すごく怒ってる人もいたよ」
「やっぱり、そうだよね」

拓海は再び新聞に視線を落とすと、嘆息した。

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