昼食後、拓海は遥都と一緒に中庭から続くプロムナードを歩いていた。
今日の授業は午前だけなので、広い敷地内を少し回り道して寮に向かっている。
暖かい陽気なので、遥都とのんびり散歩するのは気持ちがいいけれど、道のりは長かった。

「明日のオリエンテーリング大丈夫かな」
「そんなに難しいものじゃないから大丈夫だよ。ただ、ポイントとポイントの距離が長いだけで」

うんざりした顔をする拓海に、遥都はクスクスと笑いながら説明した。
明日、学園に慣れるためという名目で、一年生は校舎やその周辺でのオリエンテーリングが行われる。
こんなに広いと、始まる前から疲れそうだと拓海は思った。

「新入生歓迎会も生徒会の仕事なの?」
「うん。クラブ紹介はそれぞれの部員たちが頑張るんだけど、オリエンテーリングの準備とかね」
「そっか、やることがたくさんあるんだね」
「企画して打ち合わせして、指示を出したりまとめたり、社会に出る前に訓練させられてるよ。会長が敏腕だから、全部スムーズに進んでる。だから拓海が仲間になったら、もっと楽しくなると思うんだ」

遥都はそう言って微笑むが、すぐに思い出したように口を開いた。

「もし、補佐になっても会長には近付かないでね。二人きりにもならないでほしい」
「えっ、どうして?」
「拓海も危ないかもしれない」
「危ないって、何が?」
「和葉が前に会長と色々あったって言ってたから」
「はあ!?」

思わず立ち止まって大きな声を出した拓海に、遥都は驚いて足を止めると拓海の方を向いた。

「どうしたの?」
「だって、遥都……」
「僕は大丈夫だよ。前にも言ったでしょう。拓海がそんなにショックを受ける必要はないから。それに、会長はそれを否定してるし、和葉が勘違いしてるだけかもしれないよ」
「あ、そうなんだ」

悠真が否定していると聞いて、拓海はほっとする。でも何だかもやもやしていて、そんな自分に驚いた。
和葉が悠真とのことをそんなふうに遥都に話していたからだろうか。

そんな時、和葉たちの姿が正面に見えて、拓海は方向転換したくなった。
しかし、和葉は遥都を見つけると、笑顔でこちらに向かってくる。後ろから目付きの鋭い生徒も一緒について来ていた。

「ハルト!」
「和葉、どうしたの?」
「ユウマをさがしてるの。見なかった?」
「会ってないけど。明日の準備をしてるんじゃないかな」
「あのね、食堂にユズコショウがあったでしよ。昨日ぼくが食べたいって言ったから、叔父さんが用意してくれたのかなーって思ったの。でもね、叔父さんに聞いたら違うんだって。実はユウマが手を回したらしいって、コッソリ教えてくれたんだ!」
「こっそりなのに、僕たちに話してもいいの?」
「だって、ユウマがぼくのために用意してくれたんだもん! すごく嬉しくって!」

ユウマを探してくるねー!と元気一杯に言うと、和葉は目付きの鋭い生徒と一緒に行ってしまった。

「拓海、……拓海?」
「あ、ごめん。なに?」
「もしかして、三枝が怖かった? 彼は風紀委員だから大丈夫だよ」
「そうなんだ」

頷いてみせたものの、拓海の鬱積は一層募っていた。
蓮に向けていた視線といい、和葉の言動が釈然としない。

それに、柚子胡椒は実際に食べて気に入っていた悠真が、きっと自分のために用意したに違いない。そう考えて、何だか和葉に張り合ってるような気がして、拓海は余計にもやもやしていた。

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