拓海たちは、四人で食事をしていた。
有無を言わせず、輝く笑顔で遥都が同席を希望したからだ。

今日は遥都も一緒だからだろうか、やたらと周囲からの視線を感じる。

「あれ? これって……」

テーブルに設置されている、調味料の種類が増えている気がして、拓海は真新しいビンを手に取った。青柚子胡椒と赤柚子胡椒の小ビンだった。

「柚子胡椒が二種類も……」
「うわっ本当だ」
「へえ、唐辛子の色で青と赤なんだ。けど何で急に……、まさか木崎先輩だったり?」

水島が、拓海から受け取ったビンを眺めながら遥都に尋ねる。

「残念ながら、僕ではないよ。会長はともかく、そんな権限は僕にはないしね。拓海は何か心当たりはあるの?」

隣に座った遥都が、じっと拓海を見てくる。水島からの視線も感じるが、拓海には思い当たることはない。

「えっと、まさか本気で理事長に頼んだとか思ってないよね……」
「違うって。理事長じゃなくて、会長の方」
「何で拓海が会長に頼むんだよ、水島。昨日の今日だし、偶然だったんじゃないか?」

蓮がそう言うと、水島は肩を竦めてカレーを口に入れた。

「俺は誰にも頼んでないよ」
「そっか、そうだよね」
「うん」

遥都が嬉しそうに微笑んだので、拓海も笑顔で頷き返す。
それを見ていた水島が、啣えていたカレースプーンを皿に戻して口を開いた。

「木崎先輩って、今日はよく笑いますねー。藤沢がいるからですかね」
「そうかな?」
「そうですよ。先輩の神々しい笑顔で周りが卒倒しそうなんで、程々にお願いします」
「それじゃあ、みんなに早く馴れてもらわないとね」

遥都は再び笑顔になった。
確かに遥都の笑顔は眩しい。周囲の視線を集めて、色めきたたせてしまうのも仕方がないのだろう。

「そういや拓海は何か部活やるのか?」
「うーん、明日の新歓でクラブ紹介を見てから考えようかな」
「あのさ、拓海。もし良かったら生徒会補佐も考えてみてよ」
「生徒会補佐?」
「そう。簡単に言うと、生徒会の手伝いをしてもらうんだけど。一、二年からそれぞれ一人ずつ人選するんだ」
「そんな役職もあるんだ。でも、俺が出る幕でもないんじゃないかな。他に優秀な人がいるだろうし」
「木崎先輩、それって生徒会全員の承認がいるんじゃないんでしたっけ?」
「そうだよ。でも、拓海なら大丈夫だと思うんだ。特待生になったくらいだし、それに、役員に媚びたりしないでしょう?」
「ああ、拓海はそんなタイプじゃないな。案外、補佐に向いてるんじゃないか?」

蓮までが乗り気になって、拓海に勧めてきた。
悠真も遥都も忙しそうだし、手伝いたい気持ちはあるけれど、きちんとした役職を受けるのはまた別の話だ。生徒会の内容もよく分かっていない拓海では、逆に足を引っ張ってしまうかもしれない。
言い淀んでいる拓海に、遥都が追い討ちをかけるように懇願してくる。

「仕事は追々馴れていけばいいからね。取り敢えず考えるだけ考えてみて」
「……うん。他にやる人がいなかったらね」

遥都に弱いところがある拓海に、拒否権はないのかもしれない。

[ 3/58 ]


[mokuji]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -