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「篠宮に目を付けてるのが副会長だったとはね」

面倒そうに呟いた水島の台詞に、拓海は眉を寄せる。

「……ん? 副会長って?」
「あ、やっぱり知らなかった? さっきの人、副会長の倉林先輩だし」
「副会長、あの人が……?」

あれで?と言いそうになったのを何とか堪えた。
悠真や遥都がいる、生徒からも人気があると聞いていた生徒会は、拓海の中では立派な集団だと思っていた。
でも、副会長は人をあんなふうに平気で貶めてしまう人物だったようだ。

「あいつ陰険そうだし。俺のせいで、拓海まで巻き込んでゴメン」
「蓮が気にすることじゃないよ」
「藤沢なら大丈夫なんじゃないのー。常磐先輩もついてるしね」
「常磐先輩って、木崎遥都の親衛隊か。やっぱり、拓海が木崎先輩の幼なじみって噂は本当だったんだな」
「それ、蓮まで知ってるんだね」

噂ばかりで、肝心の遥都とはまだゆっくり会えていないのだけど。
今も和葉たちと一緒に遥都はいなかったし、また忙しくしているのだろうか心配になった。

「そう言えば、さっき会計の森崎先輩も一緒にいたけど、会長以外はみんな山岸先輩が好きなのかな」
「そうなんじゃねーの。それなのに、肝心の山岸が会長のこと好きになって、一時は生徒会もぐちゃぐちゃになってたらしい。仕事もしないで、山岸追っかけて」
「そうだったんだ……」

もしかして、去年拓海が悠真と出会った時が、蓮の言っていた時期だったのかもしれない。だったら、悠真も多忙で疲れていただろうに、失恋した拓海の話を聞いてくれたのだ。

「山岸も叔父が理事長だからってやりたい放題やりやがって、後始末も色々大変だったんだ」
「篠宮、ずいぶん詳しいよな」
「別に。みんなが知ってることだろ」
「火のない所に煙は立たないって言うけど、本当に会長とは何にもないんだよね?」
「寮で隣の部屋になって、迷惑を被ってるのは俺だ」
「ふーん。ま、いいケド。これからは気を付けないとな」
「分かってる。俺、早く結婚を認めてもらえるよう交渉してくる。じゃあ、またな」

そう言って立ち上がった蓮は、勢い良く食堂から出て行ってしまった。

「まさか、あいつの身代わりになろうとかって、考えてないよね」
「でも、実際知り合いなんだけどな」
「会長と一緒にいる姿も見られてるわけじゃないし、妄想癖のある可哀想な柚子胡椒で終わると思うけど」
「そうかな。やっぱり、柚子胡椒はインパクト強かったか。明日から柚子胡椒ってあだ名になるのかな、俺……」

拓海は軽く溜息をついた。
悠真に会って、あの時のことを感謝したい気持ちもあるし、和葉や生徒会の話を聞きいてみたいけれど、蓮のことを思うと複雑だった。

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