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「ゆ、柚子胡椒はうまいよな……」
「蓮もそう思う? 肉や魚にも合うしね。先輩は召し上がったことはありますか?」

拓海が笑顔で派手な生徒に話しかけると、彼は眉を寄ながら拓海を見ていた。
彼の思惑をあからさまに邪魔した拓海を疎ましく思っているのだろう。

笑顔の拓海と、しかめっ面の派手な生徒が見つめ合うような形になっていると、瞳を輝かせた和葉がするりと間に入ってきた。

「ユズコショウなんて初めて聞いた! ぼくも食べてみたいな。ねえ、どんな味がするの?」

和葉は小さく首をかしげながら、拓海ではなく何故か水島に尋ねている。
急に話を振られた水島は、肩をすくめると面倒そうに首を左右振った。

チクチクと刺すような視線が水島に集まる。和葉と一緒にいた生徒達が、不機嫌そうに睨んでいるのだ。
もしかして彼らは、和葉が水島に話しかけているのが気に入らないのだろうか。そんなふうに考えながら、拓海は彼らを見ていた。

「今度、叔父さんに頼んで取り寄せてもらうから、一緒に食べよ!」
「あー、後ろの人達が怖いんで結構でーす」
「えーっ」

水島が断ると、和葉は眉を垂れさせて悲しそうな表情になる。
思わず撫でたくなる様子に、誘いを断った水島は益々睨まれてしまうのだが、それに和葉が気付いたようだ。

「あっ、亮佑また顔が怖くなってるよっ」

そう言って精一杯背伸びをしながら、和葉は亮佑と呼んた大きな生徒の眉間を撫でる。撫でられた生徒は、和葉を見ながら表情を和らげた。
そんなやり取りを端から見ていると、彼が和葉に夢中なのがよくわかる。

「ほら和葉。食事する時間がなくなりますよ」

そんな時、森崎がたしなめるように声をかけた。
眼鏡が似合う物静かなインテリ風の森崎は、絶妙なタイミングでその場の流れを変えてしまう。

「あっ、そうだった。早く食べちゃわないと、ユウマを待たせちゃう。じゃあ、またね!」

笑顔で拓海達に手を振ると、和葉はそのまま行ってしまった。いつ見ても自由な人だ。
その後を追うように、和葉を囲んでいた生徒達が続く。

「俺も、またキミに会いたいなぁ」

最後に拓海は、派手な生徒にそう言い残された。
細めた目でじっとり見られながらそんな台詞を言われても、何か企んでいそうでまったく嬉しくない。

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