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和葉のいるグループは、ずいぶん目立っていた。
和葉と会計の森崎と、学園に来た時に会った大きな生徒、あとの二人は見たこともない生徒だ。みんな顔がいい上に、昂然とした雰囲気で、食堂でも注目を集めている。

和葉の隣で楽しげに会話している生徒は、もしかしたら、彼も和葉のことが好きなのかもしれない。
それとなく拓海は、ひときわ派手なその生徒を目で追っていた。
垂れ気味の目許にあるホクロが特徴的なその生徒は、制服を着くずして、ショートの髪の色もずいぶん明るい。耳にはいくつもピアスがついているが、下品には見えず、彼には良く似合っていた。

和葉のグループが拓海達の席に近付いてくると、その派手な生徒が蓮に目を止め、僅かに目を細めたことに拓海は気付いた。
それからグループから離れて、一人でこちらに向かってくる。

「篠宮蓮だよねぇ。キミさぁ、会長にちょっかい出してるんだって?」

拓海達のテーブルの前に来ると、派手な生徒はそんなことを言った。
比較的大きな声だったので、食堂に響いてしまう。周囲の生徒達がこちらに注目して騒ぎ始めた。

「はあ?」
「うわ、めんどくさー」

蓮と水島が顔をしかめた。派手な生徒の方は、薄らと楽しそうに笑っている。

「困るんだよねぇ。会長の隣の部屋だからってさぁ、そーいうの」

その言葉に周囲の騒めきが更に大きくなり、中には蓮を睨んでいる生徒まで出てきた。
絶対にわざとだ。この派手な生徒は、蓮を貶めようとしている。それに気付いてしまうと、拓海は我慢出来なかった。

「柚子胡椒が!!」

拓海はそう叫ぶと、両手でテーブルを叩きながら立ち上がった。
派手な生徒は、急に立ち上がた拓海に驚いたように目を見張る。

「うどんには柚子胡椒を入れたくて、でも食堂には七味しかないんです。うどんのシンプルな出汁に、風味豊かな柚子胡椒は最高じゃないですか。だから偉い人に頼もうと思ったんです。でも、俺は外部入学だし、会長が誰だかわからなかったので、同じ特待生だった篠宮君にお願いしてしまいました。ごめんなさい。三年間も柚子胡椒無しなのは耐えられなかったんです!」

そこまで一気にまくし立てると、派手な生徒を見た。
彼は驚いたまま拓海を見ているだけなので、更に言葉を続けた。

「でも、よく考えたら一番偉いのは理事長だと気が付いたので、もういいです。柚子胡椒はセルフで用意します」

やりきった。拓海は息切れしながら席に座ると、コップの水を口に含む。
目の前にいた水島が、楽しそうにそんな拓海を見ていた。

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