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「そういえば、あのドアってどこと繋がってるんですか? 壁の向こうは外ですよね」
「壁が二重になってる。あとは歴代会長にしか知らされない秘密だ」
「へぇー、ぜんぜん気付きませんでした。すごく凝った造りなんですね。生徒会長だった人は、みんなここを使ってたのかなぁ」
「使うか使わないかは、それぞれだったんだろうな」

生徒会長が人知れず移動できるように、わざわざ二重の壁を造ってしまったらしい。スケールが違うし、それだけ生徒会長が特別だということなのだろう。
どこへ繋がっているかは教えてもらえないようだが、一つ謎が解けた。

「そろそろ生徒会室に戻る」
「あっ、俺も行かなくちゃ」

拓海はこの後、蓮と食堂で食事をする約束をしていた。悠真は生徒会室に戻るということは、まだ仕事をするようだ。
立ち上がった悠真の後に、拓海もついて行く。

「いつも忙しいですね。ゆ…、中瀬先輩」

拓海の台詞に、ベッドルームに向かっていた悠真が振り返った。

「俺はそうは教えてないだろ」

むっとしたように悠真が言った。
いつも平然としている悠真の、いじけたような様子が何だか可笑しくて、拓海は思わず吹き出してしまった。

「すっ、すみません。悠真先輩」
「別に、いいけどな」
「……いひゃいです」

いいと言いながら、悠真に片頬をつままれて伸ばされた。
生徒会長だからとか、そういった線引きをされるのが嫌なのかもしれない。拓海は伸ばされた頬を撫でながら、ドアへ向かう悠真の背中を見送った。

「じゃあな」
「はい。また、悠真先輩」

拓海に小さく微笑んでから、悠真はドアの向こうへと消えた。


◇◇◇


拓海が水島と食堂に来ると、ちょうど蓮も到着した所だった。
蓮とはクラスは違うが、午前中それとなく彼のクラスを見てみても、特に変わった様子もなかった。このまま平穏に過ごせたらいいのだけど。

「……どんな経緯で水島とつるむようになったんだ?」

隣にいる蓮が、胡散臭そうに向かい側に座る水島を見ながら尋ねてくる。

「同じクラスなんだ」
「同じクラスだからって、誰かと一緒に飯を食うヤツじゃねえよ」
「へえ、そうなんだ。でもなんかわかるかも」
「拓海、何もされてないよな?」

蓮が、眉をしかめながら水島を睨む。

「人聞きの悪いこと言わないでくれるかな。俺、おっぱいないと駄目なんだよね」
「……おっぱいだと。あんた、分かってるじゃないか」

途端に蓮の瞳が輝きだした。
どうやら、蓮も水島と同様に、恋愛対象は女性だったようだ。
蓮は見た目が可愛らしいから、それこそ水島が好きな、年上の女性に可愛がられるタイプなのかもしれない。

「こいつ、悪いヤツじゃないな」
「うん。水島君は案外いい人だよ」
「篠宮っておっぱいの良さを知ってるんだぁ。意外だね。」
「どういう意味だ?」

沸点が低いらしい蓮が、水島を睨む。
仲良くなれそうだったのに、ピリピリした雰囲気になってしまった。
見かねた拓海が口を開こうとすると、食堂全体が大きく騒つき始めた。

「……来やがった」

蓮が舌打ちをする。
食堂の入口では、和葉や入学式で司会をしていた森崎など、数人の生徒達が入って来るところだった。

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