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「水島君、早く行こう」

いつの間にか他の生徒達にも置いて行かれてしまい、廊下に水島と二人だけになってしまった。
拓海が声をかけたが、水島は特に急ぐこともなく、相変わらず眠そうな目を拓海に向けてきた。

「なあ、会長とどんな関係なわけ?」
「えっと、……なんで?」
「会長、さっき見てたよな、あんたのこと」
「そうかな……。気のせいじゃないか?」
「それについて、僕にもぜひ話しをしてくれないか」

拓海と水島の会話に、第三者の声が割って入ってくる。声の方を見れば、平木が眼鏡を光らせながら立っていた。

「平木先輩」
「うげーっ」
「やあ、僕のことを覚えていてくれたんだね、二人とも」

顔を顰めた水島に構うことなく、口元に笑みを浮かべた平木が歩み寄ってくる。
すると、水島が拓海の腕を掴んで先へ行こうと歩き出した。

「待ちたまえ。藤沢君について、中瀬悠真から箝口令を言い渡されたんだ」
「箝口令?」

引きずられそうになっていた拓海が足を止めると、水島も興味を持ったのか立ち止まって振り返る。

「そう。君のことを一切記事にしてはならないと。彼の許可が出るまでね。一体、君達はどんな関係なんだい?」
「先輩がそんなことを?」

平木の言った内容に驚いていると、水島が拓海の前に出て平木と向き直った。

「パパラッチ先輩、こいつのことをネタにするつもりだったのかよ」
「水島君、君は色々と聞き捨てならないねえ。藤沢君は非常に興味深いんだよ。君がそうやって彼を庇おうとすること自体、大変なスクープだと思わないか?」
「別に。ま、ネタにできなくて御愁傷様です。藤沢、行こう」
「あ、うん。あの、平木先輩、悠真先輩とはただのお友達……、って言うか、先輩と後輩の関係なんで、特になんでもないです」

半ば強制的に水島に引っ張られながら、拓海が早口でそう言うと、平木は口元の笑みを少し深める。そのまま何も言わずに、拓海に手を振ると行ってしまった。

「あんなヤツに関わるなっての」
「だって、変な誤解されたら悠真先輩に迷惑かけるだろうし」

拓海がそう言うと、水島に呆れたような視線を向けられてしまった。

「お人好しもほどほどに。て言うか、悠真先輩ってなんだ。名前呼びだし」
「……あっ、本当だ」
「本当だって、あんた……。誰とでも友達になるんだ」
「友達っていうか、良くしてもらってるよ」
「俺そんな話は聞いてないし。木崎先輩は知ってる?」
「そういえば言ってない。それに、ゆ、じゃなくて中瀬先輩が生徒会長だって、さっきはじめて知ったんだ」

いつの間にか眠そうじゃなくなった水島だが、その眉間にはくっきりとしわが寄っている。

「マジかよ……。何企んでんた、あの人は」
「やっぱり、先輩と仲良くしたらマズいかな」
「今までよくバレなかったよな。親衛隊でさえ情報が掴めてないみたいだし。だったら、そのままバレなきゃいいんじゃない? なんだか楽しそうだし。それに、今さら関わらないでいるのは無理だろうな」

水島は最後の台詞を意味深く呟いた。
確かに、あの寝室のドアのこともあるし、それに拓海自身が悠真ともっと話してみたいと思っていることは事実だ。

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