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入学式が始まる。
静まり返った体育館は荘厳な雰囲気で、入場すると緊張感が増してくる。
来賓席には見たことがあるような著名な人物もいるので、それだけこの学園の凄さが窺えた。

新入生はクラスごと、名前順に横並びに席に着く。立てる音も少なくて、無駄口もないのはさすがだ。
しかし、舞台下手から生徒が現われると、それが一変してあちこちから小さく悲鳴があがりはじめる。

「ど、どうしたの……?」
「そっか、君は知らないよね。会計の森崎先輩なんだけど、今日は司会をなさるんだよ」

狼狽えていた拓海に、隣の席だったクラスメイトの橋本が教えてくれた。彼は舞台に立つ、森崎と呼んでいた生徒をうっとりと見上げている。

「そうなんだ……。人気者なんだね」

周囲を見渡せば、ほとんどの生徒がキラキラしたような目で森崎を見ていた。
話には聞いていたけれど、人気者と呼ばれる人のその人気者ぶりが、まさかここまで凄いとは。

『桐條学園高校入学式を開式いたします』

森崎は、淡々と開式宣言を進めていく。
教師も来賓も動じていないから、ここでは人気者へのああいった反応もある程度は容認されているのだろう。

その後は再び静粛な雰囲気に戻り、理事長や学校長の式辞や来賓の祝辞と進み、いよいよ蓮の挨拶が始まった。
少し気になった拓海は、周りを見回してみたが、隣の橋本も他の生徒達も、理事長たちの挨拶の時と変わらない反応だった。

嫌な雰囲気もなく、無事に蓮の挨拶が終わる。拓海が安堵していると、先ほどよりも大きな歓声が聞こえてきた。
何事かと思って舞台を見ると、何故か悠真が演壇に立っていた。

「ええっ?」

驚いた拓海の声は、周りの悲鳴にかき消されてしまった。それくらい歓声が大きい。

「橋本君、あの人って……」
「ん? 中瀬先輩は、生徒会長だよー」

案の定うっとりした表情だったが、橋本は律儀に答えてくれた。
壇上では、在校生代表として、悠真が歓迎の挨拶をしている。
初対面の時はくたびれていた悠真だったけれど、今は髪も制服もきちんとしていて、広い体育館でそこだけ輝いているように見えるほどの見映えだった。

それにしても、悠真が生徒会長だったとは驚いた。考えてみれば、悠真との会話の端々に、今ならそれとわかるような内容もあったように思う。
今まではあまり深く考えていなかったけれど、拓海が悠真と接するのは色々とまずそうだと実感してしまった。

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