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「それで嫌がらせとかされたりするわけ?」
「されるかもしれない。男の嫉妬って、意外と怖いし」
「でも、蓮に非はないんだろ」
「さあ? 篠宮のことも知らないし、俺にはわからないけど。それで、あんたは篠宮とこれからも関わるつもりなのか?」
「俺は、蓮はいい人だと思ってる」
「ふーん」

気のない返事をすると、水島は校舎に向かって歩き出してしまった。遅れて拓海も歩き出す。

「常磐先輩に頼まれたって、俺を守るってこと?」
「そうだよ」
「親衛隊じゃないのに、どうして水島君が?」
「縦社会の怖さかな。用心棒ってやつだと思っといて」

そう言って水島は肩を竦めた。
高校生が高校生をそんなふうに扱うなんて、親衛隊は不思議だと思った。手段を選ばないとはこういうことなのかもしれない。
常磐本人が言ってた、これが親衛隊の怖さのひとつなのだろう。

「ぶ、そんなビビんなよ。まあ、それだけじゃなくて、楽しそうってのもあったんだよね。だって、木崎遥都の幼なじみって、……ねえ」
「珍獣みたいな扱いやめてくれないかな」

拓海が文句を言うと、隣を歩いていた水島がちらりと拓海を見てきた。

「ところで、蓮と関わる僕は君に迷惑かけちゃう、とかなんとか言わないの?」
「そっちこそ、別に迷惑だなんて思ってないんだろ?」
「へえ。うすぼんやりしたただの可愛子ちゃんかと思ったけど、そんなわけでもないんだ」

酷い言われようだ。
さもびっくりしたように水島は言うが、本気で拓海と蓮を関わらせたくなかったなら、もっと違った方法だってあったはずだ。彼はある意味正直過ぎた。

「それより、遥都と幼なじみだっていう俺が、蓮と一緒にいる方が迷惑かな」
「言うの二回目だけど、男の嫉妬は意外と怖いからね」
「うーん」

蓮が嫉妬されて被害にあう可能性があるなら、拓海や水島が一緒にいることでそれが緩和されるといいのだが、そうもいかないのだろうか。

「遥都に相談したいなあ」
「幼なじみねえ……。しかもドジッ子」
「だからドジッ子とは違います。言うの二回目なんだけどね」
「そうだっけ? まあ、嫉妬してるのは極一部らしいし、取り敢えずは大丈夫なんじゃないの?」
「それならいいんだけど」

昨日は食堂で蓮と一緒にいても、特に問題はなかった。けれど、しばらくは様子を見ておいた方がいいのかもしれない。

「常磐先輩の依頼、あんたを見てから返事をしようと思ってたんだ」
「えっ、そうだったの?」

急に水島が立ち止まったので、拓海も足を止める。すると、水島が拓海の頭を少し乱暴に撫で始めた。

「な、なに?」
「あんたがこの学園の貴重種だってことがよくわかったんで、これからよろしく」
「やっぱり、珍獣扱いなんだ……。それって友達とは違うのかな」
「あんた次第なんじゃない?」
「そっか、よろしく。水島君」

そう拓海が言うと、そこで初めて水島が笑った。
笑うと淡々とした印象が変わって、途端に優しげになる。
用心棒だったり、人を珍獣扱いする不思議な人だけど、本質はいい人なんだろうと思った。

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