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拓海が外を見上げると、青空がどこまでも広がっていた。
今日は暖かくて天気もいい。絶好の入学式日和となった。

「拓海、俺先に行ってるな」
「うん。挨拶頑張ってね」
「おう!」

新入生代表挨拶を読む蓮は、一足先に体育館へ向かった。それを見送って、拓海は寮から校舎へ向かう道を歩く。
周りには拓海と同じように真新しい制服を着た生徒達が歩いているが、数人ずつのグループになっているから、きっと内部進学した生徒達なのだろう。

寮からの道のりも、両脇の草木が手入れされていて、綺麗な春の花達が彩りを添えている。そんな花に気を取られていると、何かに足を引っかけて躓いてしまった。

「わっぷ!」

おもいっきり両膝をついてしまい、痛さよりも羞恥が勝る。慌てて立ち上がりながら周囲を見回すと、前方でずっと拓海を見ていたらしい生徒とバッチリ目が合った。

幸い他の生徒達は既に行ってしまっていたようで、見られたのはこの生徒だけだったらしい。
恥ずかしさに耐えながら、土の付いた両膝をはたいていると、その生徒が拓海に近づいてきた。

「あんた、ドジッ子か」
「ち、違います」

藪から棒にそんなことを聞いてきたその生徒は、悠真や遥都くらいありそうな長身だった。
パーマをかけているのか、ふわりと跳ねさせた黒髪がよく似合うイケメンだ。綺麗な二重の目が半分くらいしか開いていないが、眠たいのだろうか。
とにかく、またイケメンに出会ってしまい、何となく食傷ぎみになりつつある。

「常磐先輩に頼まれた。取り敢えずよろしく」
「はあ……」
「水島怜央。あんたと同じクラスだよ」
「そうなんだ、よろしく。藤沢拓海です」
「知ってるし」

両手をポケットに入れたまま、素っ気なく返されてしまった。
常磐の名前が出たが、彼も親衛隊なのだろうか。

「もしかして、親衛隊の方ですか?」
「……キモいこと言うなよ。俺は歳上の女にしか興味ないし」
「あ、そうなんだ。ごめん」
「別にいいし。多分それが理由で頼まれたんだろうし。ところで、あんた篠宮蓮と一緒にいない方がいいよ」
「え、何で?」
「学園に篠宮を目の敵にしているやつがいるらしいから」
「どうして蓮が……」
「男にしては可愛いから?」
「えー、それだけで?っていうか、可愛いからって男が男に嫉妬するのかな」

拓海がそう言うと、首を振りながら溜め息をつかれてしまった。

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