荷物を片付けていると、部屋の呼び鈴が鳴った。遥都かと思い拓海がドアを開けると、そこには見知らぬ人物が立っていた。
その人は髪を七三に分けていて、ワイシャツの袖を捲った姿だった。貫禄があり教師かと思ったが、ズボンを見れば制服なので、学園の生徒なのだろう。

「相手を確認しないで開けるのは危険だよ」
「はあ……、すみません」

いきなり説教をされてしまった。

男が押し上げた眼鏡がキラリと光る。
絶妙な角度なのか、眼鏡に光が当たっているので相手の目が見えない。どこを見ているのかわからないし、表情が見えないので何となくやり取りしづらい。

「まあ、君は外部入学生なのだから仕方がないか。初めまして、僕はジャーナリストの平木です。因みに三年だよ」
「初めまして。あの、ジャーナリストって」
「この学園の真実の姿を探しているんだよ。突然申し訳ないんだが、ちょっと君に確認したい事があってね」

口元に笑みを浮かべながら平木が言った。
高校にジャーナリストなんているのだろうか。拓海は不思議に思ったが、新聞部のようなものだろうと思い至る。

「確認したい事、ですか?」
「ああ。君は常磐文弥と一緒にいたね。彼が何者なのか知っているのかい?」
「えーっと、今日知り合ったばかりなので……」
「常磐文弥は、木崎遥都の親衛隊の隊長なんだよ。つまり、常磐文弥と初対面だったなら、木崎遥都とは顔見知りだということなんだね。なぜなら常磐文弥が動く時は、裏に木崎遥都ありという定説が俺の中にあるんだ。おっと大丈夫、君と木崎遥都は小学生の頃からの友人だと知っているよ。ただ確認がしたかっただけなんだ」

一方的にまくし立てられて、次々に知らされるそのびっくりするような内容を消化しきれない。
まず、常磐がただの親衛隊ではなく、隊長だったことに驚かされたが、平木が拓海と遥都の関係をどうやって知ったのかも気になる。

「平木先輩!」

拓海が平木に圧倒されていると、男子にしては少し高めの声がした。
見れば小柄な生徒が、拓海達のすぐそばに来ている。

「先輩、入学したばかりの子に変なちょっかい出さないでください」
「ああ、篠宮君。久しぶり」
「お久しぶりです。じゃなくて、先輩の部屋はこの階じゃないですよね。特待生に早速探りを入れたって寮長にチクリますよ」
「それは困るな。出禁になったら何も調べられなくなる。ところで、篠宮君の部屋は?」
「お察しの通りです」
「うーん。それは波乱になるな……」
「いいから、先輩はサヨウナラ」
「わかったよ。それじゃあ藤沢君、また会おう」
「あ、はい」

平木は口元に笑みを浮かべると、眼鏡に光を反射させながら片手を上げて去って行った。
結局、眼鏡の奥はわからず仕舞いだった。

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