「すみません。あなたと話す上で、意図して明かしていませんでした。偏見を持たれたくなかったので」
「あ、いえ。……お気になさらずに……」
「ありがとうございます。木崎さんは、藤沢君が生徒達から興味を持たれることを心配しています。ですから、木崎さんと幼なじみであることを公表し、彼の親衛隊である我々があなたをガードすることにいたしました」
「それって、親衛隊のみなさんは納得しているんですか?」
「はい。藤沢君ならば大丈夫です」

常磐は笑顔で言い切ったが、拓海にはその根拠はわからなかった。
その上他人にガードされるということに気が引けていると、そんな拓海の様子に気付いたのか、常磐が話を続ける。

「この学園には政財界や資産家のご子息が通われています。もしかしたら、木崎家のご子息である木崎さんを手に入れるために、藤沢君を利用しようとする人物も現れるかもしれません。木崎さんのために、我々は尽力いたします」
「そうですか……、わかりました。よろしくお願いします」

高校生活を送るのに、そんなことも考慮していかなければならないなんて、拓海には考えられない世界だ。
自分とは程遠い、物凄く場違いなところに来てしまったような気がする。

結局のところ、新入生である拓海には、親衛隊の姿も学園の実体も、この時点では理解出来ていなかったのだった。


◇◇◇


東西に伸びた白亜の建物。この学園は、寮もとても豪奢に出来ている。
寮に着いたのは集合時間より早かったが、案内してもらった常磐に寮の説明もしてもらったので、早めに入寮することができた。

拓海の部屋は、最上階の角部屋だ。
最上階は全て一人部屋になっていて、特待生の他に生徒会役員などの部屋もあるらしい。

部屋内はダイニングキッチンとベッドルームの二部屋ある造りになっていた。
窓が大きく、明かりもたくさん入るようなっているので、昼間は電気がなくても充分明るい。備え付けの家具類も量産されているような安っぽさは感じられなかった。
やはり、お金持ちの子どもが通う学園は、学校の造りからして違うのかもしれない。

「何だこれ?」

部屋を見て回っていた拓海が、ベッドルームにもう一つ、ドアがあるのを見つけた。
ベッドの反対側、窓辺の机とクローゼットの間に、通常のものよりも一回り小さいが、ちゃんとしたドアがある。しかし、把手に触れて開けようとしたが、ドアはびくとも動かなかった。

「何のためにあるんだろう」

非常口のようなものかとも思ったが、こちら側の壁の向こうは外だったはずなので、設計ミスかインテリアの一部だと思うことにした。

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