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「俺が、荷物を取りに行ってる間に誰かが来ても、絶対にドアをあけたらいけないよ」

秀吾に真剣な声で言われて、伊吹も神妙な顔でうなずいた。

秀吾が部屋に帰ってきてくれることになった。それが嬉しくて、伊吹は一人自室で、これからのことに思いを馳せていたのだけれど。

(な、なんでー!!)

なぜか、安東が部屋にいる。
ドアは施錠していたはずなのに、そのドアを勝手に開けて、我が物顔で入ってきたのだ。
安東の他に、三人くらいいる。

ちょうど伊吹が、洗面台でコンタクトレンズを装着しようとしていたところだったので、気付いたときにはすでに侵入された後だった。
ぼやけた視界のまま、慌てて部屋に戻る。

「あーっ! やっぱりお前だったんだな!! 秀吾の同室のヤツって!!」

いきなり部屋に入られたことと、なぜ鍵があいたのかがわからなくて伊吹は混乱したが、それよりも、安東の存在自体が伊吹を恐怖させた。

「あ、どうして……」

目の前に突進してきた安東に、引き気味に数歩後退った。すぐに背中が壁に当たってしまう。

「お前が秀吾と同室になるなんておかしい!! 前が何かやったんだろっ! 秀吾が俺と一緒にいられないのは、お前がいじわるしてるからに決まってる!!」
「そ、そんなことしてません」
「華京院家なんて、幼稚園児でも知る名家ですからね。その家の名を語れば、大抵のことは思い通りになるはずです。それで一ノ瀬を脅したり、甘いことを囁いたりね」

安東と一緒にいた人物がしゃべった。穏やかな口調だけど、すごく馬鹿にした雰囲気がある。
もしかしたら、安東を可愛がっているという前任の生徒会メンバーなのかもしれない。

「無理矢理秀吾に言うことをきかせるなんて!! そんなことしちゃいけないんだぞ!」
「ち、ちがう……」

安東が言ってることはめちゃくちゃだ。
それに対して、当然怒りはあるけど、安東に対する恐怖心も半端ない。
伊吹は青ざめながら、ぼやける視界を何度も瞬きさせた。

「ふん、そうやってか弱い振りをして、男を手玉にとるのか?」

誰かが、震える伊吹のあごを掴んで上向かせる。
驚きながら、ぼやける視界で相手を見つめると、息をのむ気配がした。かと思ったら、いきなり腰を抱かれてしまった。

「よし、この俺様が、こいつにみっちり徹底的に問い詰めてやる。体にな」
「あっ、オレもオレも〜!!
「……まったく、あなた方は相変わらずしょうもないですね」
「タケル、何するんだ?」
「悪い子にはお仕置きが必要だろ。俺様がこいつを躾直すから、光希はケーキでも食ってこい」
「やだよ!! 俺も秀吾のために頑張るんだからな!」
「光希は、僕と一緒に一ノ瀬に会いにいきましょう。華京院は、徹底的に彼らにお仕置きしてもらえば、大人しくなりますよ」
「そっか、それがいいよな!! 秀吾が待ってるから俺は先に行ってるから。お前も、ちゃんとタケルの言うことを聞くんだぞ!」

(いっ、意味がわからないよ……。一体なんなの?)

伊吹は、訳もわからないまま、二人がかりでベッドに連れていかれた。

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