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金色の髪とエメラルドグリーンの瞳の、やたらと存在感のある外国人が、大きな声をあげながら一直線に伊吹達の方へ向かってくる。

「マリウスさん」と、名前を呼ぶ前に、隣にいた秀吾が伊吹を庇うように前に出た。

「マリウス待て!」

伊吹に飛びかからんばかりだったマリウスの方も、後から追いかけて来た生徒に引き留められている。
藤乃についていた風紀委員が、マリウスを羽交い締めにしており、そんなマリウスを呆れたように藤乃が見ていた。

「離してくれ!」
「アホか。お前みたいなのを野放しにできるか。可愛い伊吹に、今何をしようとしたんだ?」
「ちょっと挨拶しようと思っただけじゃないか」

そんな藤乃たちのやり取りを見ている秀吾に、伊吹は二人のことを説明した。

「友人の藤乃君と、浮気者のマリウスさんだよ」
「誤解だ!! 僕の愛はフジノへしか注がれていない! たとえイブキがヤマトナデシコのように可憐でも、……Oh! 以前会った時よりも格段に美しくなっているね、イブキ。その頬にキスを送ってもいいかな?」
「……マリウス」
「ちっ違うんだよフジノ!! ただ親愛の印に、あのマシュマロのようにやわらかそうな頬にキスをしたかっただけなんだ」

伊吹にも、マリウスがどうしようもないってことが分かった。

「けれど、イブキには素敵なナイトがいるようだ。僕はここから素敵なマシュマロを眺めているだけにとどめておくよ」

マリウスが秀吾を見ながらナイトと言った。
秀吾を騎士のように紳士的で凛々しいと表現したと思った伊吹は、嬉しくなって笑顔で秀吾を紹介した。

「ところで、どうしてマリウスさんがここにいるの?」

よく見れば、マリウスはこの学校の制服を着ている。
長身の体にとてもよく似合っているが、本人が大人びているので、まるでコスプレをしているようにも見えなくない。

「もちろん、藤乃のそばにいるためだよ」
「こいつアホだから、飛び級してるのにまた高校に入学したんだ。要するに暇人なんだよ」
「フジノと一緒に、青春時代の楽しくも美しい思い出をつくらないとならないからさ」
「苦い思い出にしかならんわ! どうでもいいけど、学園長に挨拶に行くんじゃないの?」
「おお、そうだった。挨拶はしっかりしておかないとね。それじゃあ、また会いに行くよ、イブキ。シュウゴもまた会おう」

そう言って、マリウスは颯爽と去って行く。登場の仕方も去り方も唐突だ。

何だかんだ言って、藤乃はマリウスの面倒を見てるんだな、と思いながら、伊吹は彼らを見送った。

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