23

あんなに憎悪を向けられたのは、拓海にとって初めてのことだ。
会長補佐になる上で、色々と覚悟していたつもりだったが、実際にあんな目で見られて、否定的な言葉まで投げつけられるとかなり堪える。
半ば呆然としたまま悠真に連れられて、拓海が気付いた時には寮に帰って来ていた。



また来ると言って、悠真はすぐに生徒会室へ戻ってしまった。
それからしばらくして、遥都が食堂の弁当を持って拓海の部屋まで届けてくれた。
その時に、桧山が補佐を解任されたことを教えてくれた。

「守れなくてごめん」

拓海は結果的に無事だった。けれど過保護な遥都は、拓海が悪意を向けられたことを気にして、終始気遣っていた。

「遥都も、大切な生徒会だったのに、こんなことになって……」
「拓海と比べたら、生徒会なんてどうでもいい。それに、拓海が悪いわけじゃないんだから、気に病むことはないよ」

遥都は拓海が眠るまでそばにいるつもりらしく、忙しい身をいつまでも縛っているわけにはいかないので、拓海は早々に眠る準備をした。

食欲もなかったし、精神的なものなのか、体も酷く重たく感じる。拓海は、自分で思っていたよりも弱かったのだと、気付かされてしまった。



◇◇◇



身体中が熱くて、拓海は目を覚ました。
薄い明かりの中、視界に入って来た天井がぐらぐらと揺れて、再び目を閉じる。

久しぶりのこの感覚は、熱が出た時のものだ。
何年ぶりかの発熱に、拓海の気分も重くなる。

と、その時、何かが乗っていたのか、急に額が軽くなり、続いてひんやりとしたものが乗せられた。

気付かなかったが、誰かがそばにいたようだ。
薄ら目を開けると、悠真の顔が覗き込んで来た。

「起こしたか?」
「せ、先輩……!」

慌て起き上がろうとするのを悠真が制し、ずれてしまったタオルを再び拓海の額に乗せる。

「熱が高いようだ。明日は校医に診てもらおう」
「今何時……」
「十二時過ぎだ」
「えっ、俺は一人で大丈夫ですから、先輩は休んでください。ありがとうございます」
「入学してから、短期間に色々あり過ぎたからな。体がパンクしたんだろう。巻き込んだ責任は俺にあるんだから、面倒見させろ」

拓海のすぐ近くで、綺麗な顔でそう言われる。
熱が余計に上がりそうなので、本当に遠慮したかったけれど、あらがう気力は今の拓海にはない。

悠真の指が、そっと拓海の前髪に触れる。
こんな時に誰かがそばにいてくれるのは安心する。でも、心が安らぐだけ、桧山に対する罪悪感が募るのだ。

[ 23/24 ]


[mokuji]

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -