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拓海達が生徒会室に近付いた所で、壁の角の向こうから、急に遥都が現れた。
急いでいた様子だったが、拓海を見て驚いたように立ち止まる。

「拓海!無事だった!?」

拓海の全身を見回して、何ともないとわかったのか、遥都は安心したように抱きついてきた。

「どうしたの、遥都」
「どうしたの、ってそれはこっちのセリフだよ……」

遥都に抱きつかれていた拓海の視線の先に、悠真の姿が映る。その後ろには倉林の姿もあった。

もしかして、書類を受け取るのに手間取っていたせいで、みんなに心配をかけてしまったのだろうか。拓海を見てほっとしたような表情を浮かべる倉林を見ながら、申し訳ない気持ちになっていた。

「たっくん、無事みたいだね。帰って来てよかったぁ」
「遅くなってすみませんでした。なんだかご心配おかけしたみたいで……。えっと、宇佐見さんがここまで送ってくれたんです」
「……宇佐見?」

両腕を巻き付かせたまま、拓海からゆっくり体を離した遥都が、今気付いたとばかりに宇佐見を見る。それから、不思議そうに首をかしげた。

「誰?」
「だから、宇佐見さんだよ」
「どうも、宇佐見です。第三パソコンルームに、彼を一人で行かせるのはどうかと思いますよ」

口が悪いと思ってたのに敬語だ、と拓海が驚いて宇佐見を見ると、彼は言うだけ言って、すぐに踵を反してしまう。

「待て」

そこへ悠真の制止の言葉が入った。静かなのに有無を言わせない重さがある。
宇佐見はすぐに立ち止まったが、それが何故かとても面倒そうに見えた。

「世話になったな」

そう悠真が言うと、宇佐見はちらりと悠真を見て、それからすぐに歩き始める。
何とも言えない、張り詰めたような雰囲気を感じて、拓海はお礼も言えずに宇佐見を見送ることしか出来なかった。




「親衛隊にうまく伝達が行っていなかったみたなんだ。それで、拓海が一人で校内にいるって聞いて、みんなで慌てたんだよ」
「でも、遥都達は会議中だったよね」
「そんなの会長がいたからすぐに終わっちゃったよ」

生徒会室で、桧山に淹れてもらったお茶を飲みながら、拓海は遥都から説明を受けていた。

「ご心配をおかけしてすみませんでした」
「拓海は悪くないよ」
「……いいえ」

遥都が慰めようとする中、森崎の凍てつく視線が拓海へと突き刺さる。

「そもそも、あなたには自覚が足りなさすぎる。こういった面倒を引き起こす前に、もっと周囲に気を配るべきです」
「はい、すみませんでした」
「い、いや、でもさ、何であのオタ部屋がリストに入ってたのかなぁ……ってね」

ぎろりと森崎に睨まれて、しどろもどろになりながら、倉林が疑問を口にした。

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