15会議室に向かう桧山に、途中まで一緒に行こうと誘われたので、拓海は共に生徒会室を出た。
「じゃあ、よろしくお願いします。親衛隊は、後から付いて来てくれるから大丈夫だよ」
「はい、わかりました」
頷く拓海を、桧山は目を細めながら見ている。
「何か……?」
「いや、本当に悪いなと思って。気を付けて行ってきてね」
「はい。大丈夫なので本当に気にしないで下さいね」
いつもの笑顔になった桧山が、くるりと踵を返した。その後ろ姿を見送って、拓海もリストに載っている場所を目指して歩き出す。
生徒会室のある棟から出ると、確かに生徒が一人、付いて来ているようだった。
知らない生徒だったが、拓海と目が合うと軽く会釈する。
行き帰りの時とは違って、生徒会の仕事の最中に付いてくれる親衛隊は、目立たないようにしなければならないらしい。
つくづく申し訳ない気持ちになりながら、拓海もお辞儀を返した。
調理室や音楽室など、クラブ活動などで意外と色々な場所が使用されている。
使用届けを出していなかったのは、ただ単に忘れていただけではなく、生徒会室まで赴くのに抵抗があるのもあったようだ。
出さなかったらこうして取りに来るのだから、わざわざあの重苦しい異次元の扉を開けに行きたくないという気持ちも、わからなくもない拓海だった。
「えーっと、次は……。花園? ああ、温室か」
敷地内に温室まであったらしい。
学園内は、どんな場所でも花の手入れが行き届いているから、きっと温室も立派なものだろう。
少し離れているけれど、拓海は期待しながら温室へ向かった。
思った通り、温室も立派なものだった。透明な建物は、最近出来た植物園にあったようなデザイン性の高い建物で、中には様々な植物が育てられているのが分かる。
温室の入り口。白い取っ手の付いたドアを開けた瞬間、拓海は左右から両腕を捉えられた。
「えっ!?」
両サイドを見ると、白に近い金色の髪と、目も覚めるような青い髪が飛び込んでくる。
拓海のイメージする温室とはかけ離れた存在に、戸惑った。
「何しに来たの?」
「こっちに向かって歩いて来るのをずっと見てたんだ。近くで見ても可愛い」
青い髪がずいっと顔を近付けた。
咄嗟に顔を引きながら、拓海が腕を離そうとしても、拘束してくる手はびくともしない。
「あの、使用届けをもらいに……」
「ああ?」
「テメェ、生徒会か!?」
突然敵意を剥き出しにされ、驚いているうちに温室の中へ突き飛ばされた。
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