14生徒会室に到着すると、拓海は水島を振り返った。
「ありがとう水島君。それじゃあ、……行ってくるよ」
「健闘を祈る。けどまぁ、あんまり根つめ過ぎないようにな」
水島が気遣うような声をかけてくる。余程拓海から悲壮感が漂っていたのだろう。
頷いた拓海は、生徒会室の扉を開いた。
生徒会室にはまだ誰もいない。色々と準備をしておこうと思ったので、早めに来たのだ。
ゆったりとした造りの部屋は、誰もいないと余計に広く感じる。
今日は、悠真も遥都も風紀との会議の為にいないので、拓海はかなり緊張していた。
「たっくん、早いね! おつかれー!」
パソコンと睨めっこしているうちに、倉林がやって来た。向けられる笑顔には何の含みもなくて、拓海も自然と笑顔になる。
ちょっと前までは考えられなかったことだ。
「早く来たんだ、偉いねぇ。分からないことがあったら何でも聞いてよ?」
「はい。ありがとうございます」
正直、森崎よりも今の倉林の方が、遥かに質問しやすいので助かる。
そう思って拓海が見上げると、嬉しそうに倉林が笑った。
「こんにちはー! お二人とも早いですね」
桧山が生徒会室に来た。
いつも華やかな倉林に、明るい桧山が加わると、途端に賑やかな雰囲気になる。
「いい匂いだねぇ。何持って来てくれたの?」
「今日はカップケーキを持って来たので、後で食べて下さい」
「わーい!」
桧山は、男らしい見た目でお菓子作りが上手いし、気配りも出来るマメな男子だった。絶対に、半端ないモテ男に違いないと拓海は思っている。
「すみませんが、今日は会長達の方のお手伝いに行くことになったので、休憩時に勝手に食べていて下さい。……あ、しまった!」
「んん? どうしたの?」
「使用届けの回収に行かなきゃいけなかったんですが、会議に参加してたら間に合わないです」
「あれ、今日までだったっけぇ?」
「はい。あと少しなんですよ」
「……あの、俺でよければ代わりにやりますよ」
拓海が声をかけると、桧山が顔を輝かせた。
「本当? 申し訳ないけど、助かる」
「えー、たっくん大丈夫? 俺が行くよぉ」
「大丈夫ですよ。使用届けをもらえばいいんですよね?」
「うん。部活なんかで、部室の他に教室を普段から使用している所に書いてもらってるんだ。各団体がここに持ってくることになってるんだけど、提出がない所には、回収に行かなきゃならないんだ」
「それくらいなら、俺が行ってきます」
「えー、俺も行くよぉ」
「大丈夫ですよ、ね」
「うーん。倉林先輩が一緒に行ったら、藤沢君が森崎先輩にまた何か言われるかもしれませんよ。それより藤沢君を立てておきませんか?」
桧山が苦笑いしながら言うと、倉林も名案だとばかりに頷いた。
「リストも入れてあるから、チェックがない場所を当たってみて。藤沢君の親衛隊は俺から呼んでおくから」
「親衛隊?」
「当然だよ。役員が一人で放課後の校内をフラフラ歩いてちゃ駄目だからね。親衛隊には邪魔にならないようについて行くよう伝えておくよ」
「えー、そう。そうなのか……」
ノリで結成された親衛隊なのに。
親衛隊のメンバーの負担を考えると申し訳ない気持ちになる。
「……護身術、習おっかな……」
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