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二階堂から、秀吾に関する衝撃的な話を聞いた後、伊吹は藤乃と共に食堂で昼食を食べた。
残念な事に、そこにも秀吾らしき人影は見当たらなかったうえ、いくつもの視線が自分達に集まってしまい、大変居心地の悪い時間を過ごした。

そのうちに、伊吹の視界がぼやけているように見え始めた。そのまま情報収集に赴いた藤乃と別れて、伊吹は急いで寮に戻った。

裸眼でも見えるようになっている時間は増えていたが、環境が変わったたせいか、もう視界がぼやけ始めている。
そうなったら、メガネかコンタクトレンズをつけてしまわないと、目が疲れて頭痛を起こしてしまうのだ。

しかし、部屋に帰ってきた途端に、待っていたかのように誰かがチャイムを鳴らした。
伊吹に居留守と言う文字はない。ぼやけた視界のまま、伊吹は玄関を開けた。

「初めまして、華京院君」

ドアこ向こうには、つい先程講堂で見たばかりの、この学校の生徒会長が立っていた。

「突然申し訳、……っ!!」
「はい?」

どうしたんだろう、と思いながら生徒会長を見上げると、じっと伊吹を見下ろす強い視線とぶつかった。
ぼやけていても分かるその視線は、何だかちょっと怖い。

「あの……?」
「あっ、も、申し訳ない」

生徒会長は、眉間に皺を寄せながら首を振る。
体調でも悪いのだろうかと伊吹が心配していると、生徒会長が多少上ずりながら喋り出した。

「あ、あの。編入手続きの事で、理事長より言伝があるのだが、お、お邪魔してもかまわないかな」
「はい、どうぞ。わざわざありがとうございます」

視界は、少しくらい我慢すればいいだろう。それよりも、生徒会長は大変だなと思った伊吹は、そこからまた秀吾へと思考を飛ばしそうになりながら、相手を室内に招き入れた。

「……同室者はいないのかな?」

さり気なさを装いながら、生徒会長が尋ねる。
そこで、安東が生徒会から可愛がられていると二階堂が言っていた事を思い出した。

(もしかして、秀吾君がいないか確認しに来たのかな?)

そう思ったら、急に目の前にいる生徒会長に対する敬意が無くなってしまった。
正直、だんだんぼやけた視界も辛くなってきたし、早いところお引き取りいただきたい。

「理事長のお話は何でしたか?」

早く用件を終わらせて欲しくて、お茶の用意もそこそこに声をかけると、いきなり腕を掴まれた。

「こっちを見て!!」
「うわっ!」

突然の事に訳も分からいまま、伊吹は生徒会長に引き寄せられる。
がしっと強く腰を抱かれて、必然的に向かい合った生徒会長を見上げる形になった。

「……美しい。とろけたように潤んだ瞳が堪らない。僕を誘っているんでしょう?」
「へっ? えっ?」
「何て色気だ。僕を、僕を狂わせる気だね!?」

(ちょ、ちょっと、何が起こったのー!?)

生徒会長の荒い息が降り掛かって、伊吹もパニックになった。

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