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あれこれミスをしながらも、大きな失敗は無く、やっと生徒会一日目の仕事が終わった。
にこやかに生徒会メンバーに挨拶した拓海だが、ようやく隣からの無言の圧力から解放されて、内心ほっとしていた。

「拓海、一緒に帰ろう」
「うん」

遥都に促されて生徒会室から出ると、廊下に長身の人影があった。
拓海達に気付くと、無言で近付いて来る。さりげなく遥都が拓海の前に出た。


「戸谷君」

近付いて来たのは、戸谷だった。
高い位置から見下ろす藍色がかった黒い瞳と赤みの強い茶色い髪。きつめの視線も相変わらず健在している。
何故か暫く会えなかったけれど、心配していた怪我も良くなったようだ。

「拓海の知り合い?」
「迎えに来た」
「あ……、親衛隊だったね」

水島が副隊長になってしまったので、戸谷まで拓海の親衛隊に入ってしまったのだ。水島を尊敬しているのは知っていたが、そこまでしてまで水島のそばにいたかったようだ。

「親衛隊?」

拓海の呟きに、何故か遥都が反応した。

「悪いけど、拓海には僕がついてるから君たちは必要ないよ」
「俺は水島さんから任された役目を全うするんで。これからは俺が藤沢を送り届ける」

無言で互いに見つめ合う。
そんな二人の間に、拓海はすっかり挟まれてしまった。

「忙しいのに、戸谷君は大丈夫? えっと、部活は空手部だったよね」
「部活の後は鍛練してるだけだ。あんたが連絡してくれれば、いつでも迎えに行ける」

大好きな水島からの頼みごとならば、何があっても戸谷はこなすだろう。
遥都をちらりとうかがえば、拓海を見ながらため息をついた。

「あくまでも立場は弁えるように」
「言われなくても、あんた達と馴れ合うつもりはねえよ」
「そう。行こうか、拓海」

遥都が拓海の腕を取って歩きだし、戸谷はその後を少し距離を開けながらついてくる。

非常に気まずい。出来るなら、もう少し和やかに三人で寮に戻りたい。
でも、戸谷はそんなタイプではないようだし、何故か遥都まで戸谷に対して壁を作ってしまった。
そのうちに打ち解けられればいいのだけれど。
拓海は、今日一日で、だいぶ気力を失った気がしていた。

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