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同じ部屋で生活すると言う事は、それだけ相手と関わる事も多くなる。
それはつまり、伊吹のボロが見付かる可能性も高いと言う事だ。

伊吹は、緊張しながら同室者が来るのを待っていた。けれど、藤乃が来た時以外に、結局この部屋のドアが開かれる事はなかった。

気になって確認した部屋のプレートには何も無くて、誰が同室者なのかも分からないままだったりする。
このまま悶々としながら待っているのも辛いので、思い切って伊吹の同室者について、管理人に聞いてみたのだけれど、歯切れの悪い回答を貰って終わってしまった。




そうして、結局同室者が謎のまま、とうとう始業式当日を迎えてしまった。

伊吹は鏡に自分を映したまま微動だにしないが、実のところ、脳内は色々とごちゃごちゃになっていた。

「それじゃ、伊吹の同室者は他の部屋に住み着いているってこと?」
「……」
「伊吹ー! おーいっ」
「あっ、ごめん。何だっけ?」
「大丈夫かよ……」
「大丈夫。僕は秀吾君の手助けをするために、槍が降ろうが雷が落ちようが、這ってでも学校に行くんだから」
「そりゃ、壮絶なサバイバルだな」

生徒会の任期は、十月から九月までの一年間。
秀吾は既に生徒会に入っているはずだから、今日の始業式で壇上に立つ姿が見られるはずだ。

秀吾の晴舞台。
そう考えると、伊吹を悩ませる様々な事も軽くふっ飛んで行くようだ。

「よし、藤乃君、早く行こう!」

伊吹の脳内では、既に秀吾が生徒会長の挨拶を始めていた。




◇◇◇




「な、なんで……」

伊吹は、呆然としながら呟いた。
生徒会長の挨拶をしたのは、全くの別人だったからだ。代理なのかとも思ったが、そうでもないらしい。

(アキノリユキって、だれー!?)

一年の時のクラスメイトでさえ、全員覚えていないだろう伊吹には、知らない人物が多過ぎる。
壇上のアキノリユキは、メガネをかけた真面目そうな人だった。
近くに控えている生徒会と思しき人たちを見回しても、秀吾の姿は見えない。

「……どうかしたの?」

隣にいた淡路に、小さな声で話しかけられた。
淡路とは、またクラスメイトになってしまったのだ。

「あの、生徒会に秀……一ノ瀬秀吾君はいないんですか?」
「一ノ瀬?」

一ノ瀬秀吾の名が伊吹の口から出て、淡路は少し驚いたようだ。
しかし、その事については問わず、すぐに質問に答える。

「あいつ、生徒会にはいないよ」
「……うそ」
「有望株だったみたいだけどね。色々あったらしい」

(何で、秀吾君──?)

伊吹がいない間に、一体何があったのだろう。
今すぐ秀吾の元へ行きたかったが、その秀吾の姿を講堂内で見つけることは出来なかった。

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