「いーぶーきいぃ!!」
「藤乃君!!」

伊吹を見た途端、藤乃が抱きついてきた。

「伊吹いぃぃ。……あれ、なんか、太くなった?」

伊吹に回された藤乃の手が、確認するように体を撫で回す。
さすが藤乃だ。そういう所のチェックは厳しい。

「うん、でも入院している間に痩せたんだよ」
「えっ!? これ以上太かったの?」

伊吹はモジモジしながら頷いた。
頭がちっちゃくて、手足が長い藤乃に言われると恥ずかしい。
身長は平均的だが、藤乃はスタイルが抜群にいい。
それだけじゃなく、顔もアイドルみたいに整っていた。大きめなアーモンドアイが藤乃を童顔に見せていて、その顔に浮かぶ人懐っこい笑顔が、男女問わずみんなを虜にしている。

「伊吹、本当に学校で何があったの? 顔の傷は残ってないみたいだけど、こんな体になっちゃって」
「うん……」

もともとふくよかな体だった伊吹だが、ぐんと丸みを帯びたのは高校に入ってから。更に言うなら、秀吾と屋上で過ごすようになってからだった。
秀吾と一緒にいるのが、嬉しくて楽しくて恥ずかしくて、ついつい秀吾が用意してくれる美味しいお菓子に手が伸びてしまっていたのだ。
でも今は、病院食と秀吾と離れたせいで、体重は戻りつつある。


伊吹を心配してくれる藤乃に、車の中で高校に入ってからの出来事を正直に話した。
行動派の藤乃は、女の人だけじゃなく、男の人とも付き合ったりしているから、伊吹よりも恋愛経験は豊富だ。
伊吹が同級生、しかも同性とお付き合いしていると聞いて、藤乃は物凄く驚いていたが、喜んでもくれた。

「浮気かぁ。伊吹の良さを分かってくれるような人なんだから、きっと何か理由があったんだよ」
「うん、そうなのかな」
「何だかんだ言っても、伊吹はそいつの事を信じてるんでしょ」
「うん」

やっぱり藤乃は、何でもお見通しだなぁと伊吹が考えていた時、車は中務の家に到着した。
伊吹と藤乃が車から降りると、向かいの電信柱の影から、急に金髪の外人が飛び出してきた。

「フジノ!」
「……マリウス!!」
「どうしてなんだい、フジノ。ボクを置いて突然帰国するなんて酷いよ」

長身の外人が、エメラルドみたいに綺麗な緑色の両目から、涙をホロホロと流している。しかも喋っているのは流暢な日本語だ。
伊吹は色々ビックリしすぎて、ポカンと外人を見上げた。

「お前、リズとデキてんだろ! 何で日本にいるんだよ!?」
「フジノを追い掛けて来たに決まってるじゃないかっ」
「ふざけるな! アンリともエッチしたって知ってるんだぞっ」

(リズ、アンリ……? 出来てる、エ、エッチ?)

なんて言うか、さっぱり意味がわからない。

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