「これがバレちゃったら、俺の明日が無くなっちゃうから、皆には内緒だよ」

そう言って、倉林は持参したノートパソコンを操作し始めた。

『大好きなんだ』
『それで?』

パソコンから聞こえてきた声に、拓海は倉林を見た。
倉林は困ったような表情のまま一つ頷く。

「会長と、篠宮の会話だよ」

拓海が驚いている間に、パソコンから聞こえる会話は進んで行く。

『滅茶苦茶好きなんだ』
『そればかりだな』
『だって、どうしたらいいんだよ。本当はもっと一緒にいたいのに』

蓮が、悠真に告白をしているように聞こえてくる。
二人がこんなに親しげに会話をするような仲だとは知らなかった。それに、内容が内容だけに、拓海の衝撃は大きい。

『……仕方がないな』
『マジ!? 俺、何でもするから!』
『先ずは言葉遣いを何とかしろよ』
『はい!』

嬉しそうな蓮の返事を最後に、パソコンから流れる会話は途切れた。

「……先輩、これは?」
「実は、モリリンがたまたま機材を置きっぱなしにしてて、録音しちゃってたみたいなんだよねぇ。篠宮、生徒会室で会長と二人きりで会ってたらしいよぉ」

蓮と悠真の会話を本人達には言わずに録音してしまったらしい。
だから倉林は、始めに内緒だと釘を刺したのだ。

「それで、この二人のやり取りがあったのが、春休みの終わりくらいかなぁ。この後に会長の隣の部屋があの子になってたしさぁ。和葉もショック受けて可哀そうだったんだ。ただ、篠宮が一方的にスキスキ言ってるだけで、会長の方は平常時のままだったから、まだ良かったんだよねぇ」
「でも、蓮には結婚を考えるくらいに好きな女の子がいるんです。これは何かの間違いか、勘違いなんじゃ……」
「付き合ってる子がいるのは調べたから知ってるよぉ。でもさぁ、会長にも許婚がいるし、カモフラージュみたいなものかなって思ってたんだ」
「そんなはずないと思います」

彼女の話をしている時の蓮は、本当に嬉しそうだった。羨ましいと思うくらいに。

「そうだったとしても、会長とこんなに親しいのは許せなかったんだよねぇ」

それなら、拓海だって陰で悠真と親しくしてもらっている。
けれど、蓮も同じように悠真と会っていたのだろうか。そう考えると、なぜか傷ついたように拓海の胸が痛んだ。

「ぜったいに会長補佐もあの子だろうって皆言ってたんだよねぇ。和葉は泣いちゃうし。だからホント許せなかったんだ」
「それで、食堂であんなことをしたんですか?」
「……うん。でも実際は会長補佐にはならなかったし、会長がいいように操ってるだけなのかなぁって思い始めたんだ。だから、もうしないよ」
「そうしてください。蓮は俺の大切な友人なので……」
「ごめんねぇ。そんなに泣きそうな顔しないで、たっくん」
「えっ? 俺、泣きませんよ」
「うん。もう意地悪しないからね。たっくんは笑っててね」

倉林の方が泣きそうな困った表情を浮かべながら、拓海にそう告げた。

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