一瞬耳を疑った拓海だったが、じっとこちらを見る和葉は、本気で言っていた。

「山岸先輩、それって遥都をどう思っているんですか?」
「大切なお友達だよ。それなのに、ハルトは藤沢君の側にいたいって言うんだ」

もしかしたら、和葉は遥都のことも好きなのかと思ったが、そういう訳でもないようだ。
だから、尚更和葉の言葉は、拓海には許せるものではなかった。

「俺、先輩とは根本的に考えが違うみたいです。遥都がいるから会長補佐をしないなんてことはありません。それに、先輩は遥都を自分のもののように仰るんですね」
「そうかな。でも、遥都は僕のことが好きだったみたいだよ?」
「だ、だったら尚更、そんなふうに遥都を軽んじるようなことは言わないでください!」
「藤沢!!」

思わず声を荒げた拓海を三枝が立ち上がって怒鳴り返しす。

「お前、調子こいてんじゃねぇぞ」
「ユキナリ待って! 僕のために怒らないで」
「和葉……」

和葉はポロポロと涙を流していた。そんな和葉を見て、三枝は射殺さんばかりに拓海を睨み付けてくる。
三枝は、和葉が言っていることに疑問はないらしい。自分以外のライバルがどうなろうと、関係ないのだろうか。

「亮佑も、藤沢君に告白したって聞いたし、僕、どうしたら……」
「和葉、和葉には俺がいるだろう? だから寂しい思いはさせない」
「うん。ユキナリ、ありがとう」

まるで付き合ってるような雰囲気の二人に辟易としつつ、拓海は会話の内容に驚かされた。
今のところ、誰にも告白されたこともないし、そんな気配もない。思い当たるのは、今日の食堂でのことだ。

「……あの、亮佑って河峰先輩ですか? それなら告白なんて違いますよ」
「ウソだ! だって、もっと早く出会っていたかったって言ってたんでしょ!? 僕よりも早く藤沢君に会いたかったんだ!」
「だから、あの、それは違うんです」
「どうして否定するの? 藤沢君も、亮佑の気持ちを軽んじてるんじゃないか!」
「お前、いい加減にしろよ!」

いい加減にしろと言いたいのは、こちらの方だ。
そう拓海が思っていた時、サロンに入ってきた水島がそれを代弁した。

「いい加減にしてくれませんか?」
「水島君!」
「虐めはやめてください。これでもうちの大事な藤沢なんで、一応。藤沢一人に二人がかりで、おまけに怒鳴り声まで聞こえてきましたが、まさかこんな場所で制裁ですか?」
「そんなはずある訳ないだろう!」
「ですよねぇ。風紀副委員長が率先して制裁なんかするはずないですよね」
「酷いよレオ。どうしてそんなこと言うの? 僕の方が藤沢君に虐められているのに……。レオはわかってくれないの?」

愴然とした面持ちで、和葉が言った。
涙で潤む瞳や萎れた姿はとてもいじらしくて、拓海が何も知らなかったなら、つい手を差し伸べたくなっていただろう。

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