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軽い口調だが、目が笑っていない。
そんな琉生に尋ねられて、ようやく俺は、己の馬鹿さ加減に気付いた。

「みのりは今思えば、弟みたいなもんだったんだ。稔は、無理矢理抱いてでも欲しいと思った」
「最低」

本当に最低な事をした。
稔を無理矢理自分のものにしておきながら、目の前でみのりを可愛がっていた。

「金曜からずっと稔を探していた。みのりが何か言いたそうにしていたが、そんなみのりより、稔と話がしたかったんだ。そのケーキ、稔が作ったんだな?」
「あげないよ」

ジロリと睨む琉生に、俺は首を振った。

「俺にはそんな資格ねぇよ。お前、稔が好きなのか?」
「もう告白済み」
「なら、俺達はライバルだな」
「どうかな。もう、お前の事眼中にないんじゃない? ね、ミノルくん」

そう言って琉生が寝室のドアを開けると、そこに稔がいた。

「稔!」

思わず駆け寄ろうとした俺の目の前に、琉生が立ち塞がる。

「お触り禁止ですよ、お客さん」
「何でテメェの寝室から出てくんだよ」
「お前と違って紳士なんで、襲ったりしてねーよ」
「だからって連れ込んでんじゃねぇよ」
「お前がほっぽり出すからだろうが。俺は何度も確認したよな?」
「──いい加減にしろ、お前ら!」
「……稔」
「ミノルくん、ごめんね!」

稔がギッと俺達を睨んでいた。やっぱり今すぐ襲いかかりたいと思わせるのは稔だけだ。

「ヨコシマな目で見てんじゃねーよ」
「テメェもな!」
「……お前らいっぺん死ぬか?」
「ゴメンナサイ」
「稔、すまなかった。誤解して、傷つけて、無理矢理抱いて、たくさん泣かせた」

稔が、ぐっと唇を噛み締める。そうやって、悔しいのも泣くのも我慢してきたんだろう。

「これからもたくさん泣かせたい。抱き潰して、俺の腕の中で泣かせたいんだ!」
「俺が許さん! 言っとくけど、たとえ元サヤになったとしても、俺は引く気はないからな。ミノルくんは、俺の腕の中でこそ幸せの絶頂を味わうんだ」
「テメェ、男の抱き方も知らねえくせに大口叩くなよ」
「愛があれば関係ありません。むしろ、俺のハジメテはミノルくんに捧げるんです」
「はっ、稔の初めては俺がいただいたからな。稔は俺でなきゃ満足しねぇよ」
「……お、お前らっ、二人とも御免こうむる!!」

そう怒鳴った稔は、猛ダッシュで部屋から出て行ってしまった。

「お前が厭らしい目で見るから嫌がっちゃったじゃんかよ」
「それはテメェだろうが。稔は絶対に逃がさねえからな」
「俺もだ。ミノルくんを泣かすようなアホには任せられねえ」

俺達は睨み合う。
琉生になど、絶対に負けられない。
俺は、稔を再びこの手にして、めいいっぱい甘やかしてやるんだと誓った。


end.

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