12

『今までありがとう』

やっと繋がった電話で告げられた言葉に、俺はショックを受けていた。


みのりを落ち着かせた後、俺は屋上に行ったが、稔は見当たらなかった。琉生が連れて行ったと聞いて、あいつの部屋に行ったが誰も出ない。
最後に見た稔の表情が忘れられない。土曜は稔と約束をしていたが、このままでは一緒に過ごせないだろう。
今更になって、なぜあの時稔を追いかけなかったのかと後悔していた。みのりを琉生に預けて、すぐに追いかけていれば良かった。

俺と二人になった時にだけ、少し甘えるような仕草を見せるようになっていた。
それを可愛く思っていたが、もっと甘えて欲しかった。
だが、稔はそんなタイプではないから、素直に甘えてくるみのりが可愛くて、甘やかしていた。
元々体も弱くて華奢なみのりは、俺の庇護欲をそそる。だから、ついみのりを庇ってしまった。
稔は、みのりに変な事を言うような男じゃない。誤解して傷付けてしまった。
早く稔と会って話がしたい。

しかし案の定、稔と連絡も取れないまま、土日が過ぎてしまった。
月曜となった朝に、ようやく稔から連絡が入ったかと思えば、聞かされたのは別れを告げるような台詞だった。


「お前、あれから稔はどうしてたか知ってるか?」
「何だよ藪から棒に。ま、上がれば?」

俺は琉生の部屋に押し掛けていた。
上がった部屋のテーブルの上に、小さなケーキが皿いっぱいに乗せられている。
それを一つ口に運んで、琉生は幸せそうに笑った。

「あげないよ、これ」
「お前もみのりに作ってもらったのか?」
「あー? みのりぃ? ちげーよ」
「みのりだろ?」
「違いますっての。これは俺が今アタック中の子に作ってもらったんだ。俺が普段メロンパンしか食わないから、野菜入りなんだって! 優しいよねーミノルくん」
「どう言う事だ?」

俺が琉生を睨むと、ヤツはスッと表情を消した。

「俺、ミノルくんを泣かせた事、許さないよ」
「泣いた?」
「そうだよ。お前がみのりを大事にしてる間、俺はミノルくんを慰めてたんだ」

カッとなった俺は、琉生に殴りかかろうとしたが、直ぐにそんな資格は俺には無かったのだと気付いた。
俺が稔を泣かせた。

「……テメェ男は眼中に無かったんじゃねーのかよ」
「口調変わってますよ。そうだったんだけど、ミノルくんは特別だったみたいで。因みにまだ手は出してねーよ」
「チッ、手ェ出してたらブッ殺す!」
「ミノルくんがオッケーしてくれたら出しますよ。てか、篤志はみのりとイチャイチャしとけばいいじゃん。二股は俺が許しませんよ」
「……」
「お前は、誰が好きなんだ?」

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