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「ちょっと付き合って欲しいんだけど」

男の上目遣いは気色悪いと思っていたが、「ダメかな?」とお伺いを立てるような飛鷹に、俺はあっさり了承していた。

休みの今日は珍しく鴻江と約束していた。けど、昨日の今日でヤツと仲良く出かけるなんて出来るはずもない。
寮でウダウダしてても仕方ないから、飛鷹と出かける事にした。
のだけど──。

「別れてくれない?」
「急にどうしたわけ?」

喫茶店の真後ろで繰り広げられる男女の別れ話。因みにこれで五件目だったりする。
俺は一人でそんな下らないやり取りを聞いていた。
そう、一人で、飛鷹と見知らぬ綺麗なお姉さん達のやり取りを聞かされている。

てか、飛鷹てめえどんだけヤリチンなんだよ!
しかも皆モデル並みのいい女だし!!

「真面目になろっかなって」
「もしかして青春? ま、頑張って」

それであっさり話は終わる。
中には、そんなつまらない事でわざわざ呼び出すなって言って人もいた。怒る所そこなんだな。
あんた達どんだけ割り切った付き合い方してんだよ。

飛鷹が生粋の女好きでヤリチンヤロウだと言うのを聞いていたが、それが事実だったんだと嫌でもよくわかった。

「ミノルくん、ごめんね!」
「お前、どんだけだよ」

謝りながら俺の前の席に座った飛鷹に、呆れた視線を送る。

「全部綺麗さっぱりしたよ」
「へー、ご苦労なこって」
「なあミノルくん、出よう」

またどこかに付き合わされるのか。
昨日は世話になったし、仕方がないから半分諦め気分で飛鷹について行った。


連れて来られた場所は、普通の公園だった。

「ミノルくん薔薇が綺麗だね」
「まあな」

薔薇の季節だったらしく、絶好調に薔薇が咲き乱れているが、正直男二人でどうかと思う。
俺達は、薔薇が良く見えるベンチに、仲良く並んで座っていた。

「ミノルくん、もう俺は女は全部切ったし、男はもとからいない」

飛鷹が、真剣な目で俺を見つめてくる。普段の雰囲気とはがらりと変わってしまった飛鷹に、俺は何も言えずにただ見上げる事しか出来なかった。

「俺はミノルくんが好きだ。本気で欲しいと思ってる」
「っ、飛鷹……」
「急にこんな事言ってごめん。でも、俺の気持ちを分かって欲しかったし、覚悟してもらいたかったんだ」
「覚悟?」
「うん。これからグイグイ攻めるんで、その覚悟」
「ちょ、お前、でも女好きなんじゃないのかよ」
「そうだよ。男なんか論外だった。ミノルくんと出会う前までは。美味しそうだって思ったのは、ミノルくんだけだよ」

そう言って、飛鷹は笑った。

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