「何か用?」

対応が冷たい!
屋上の隅っこで見付けたミノルくんに近付いて行ったら、邪魔だといわんばかりにあしらわれた。

たいていミノルくんは一人でここにいると風紀室で聞いて、俺はさっそく足を伸ばしている。
もちろん、屋上に繋がる扉を開けるのは簡単なもんじゃなかった。ミノルくんを守り隊のおっかない人たちにより、難攻不落となった鉄の扉を突破しなきゃならないんだから。
この時ばかりは、心底風紀委員長で良かったと思った。

警戒するミノルくんの隣に座って、俺はお気に入りのメロンパンの袋を開ける。

「いつも一人?」
「食堂は煩いからな」
「ああ、だね」

警戒しつつも、さっきお喋りしたからか、ミノルくんは俺を追い出すような事はしなかった。
話しかけても答えてくれるし。

「アンタ、甘いもんばっかりだな」
「まぁね。ミノルくんも食べる?」

俺は拒否されるだろうと思いつつ、ノリでメロンパンを差し出した。
けど、ミノルくんはメロンパンにあっさり噛りつく。
唇と一緒にホクロが動いて、俺はミノルくんの口元に釘付けになってしまった。

……てか、何でそんなに素直に食べちゃってんですか……?

「やっぱ甘いな」
「っあ、ああうん。甘くなきゃメロンパンじゃないからねー」

何事も無かったように俺もメロンパンに噛りついたけど、内心バクバクだよ。
そんな俺に、ミノルくんは唇を緩やかに綻ばせる。

「何キョドってんだよ」

バ、バレバレだよねー。

「いや、警戒してたから、すぐ噛りつくとは思わなかったし」
「はは、ダセ」
「……もしかしてわざと?」

俺を見て笑ったミノルくんに、今度こそ本気で釘付けになった。


◇◇◇


放課後、お気に入りのベンチで寛ぐ俺に、再び来客があった。
美少女もびっくりな可憐な男子。俺とアンポンタン篤志タンの幼なじみ、比留間みのりだ。

「琉生君」
「あー? お前こんな所でフラフラしてて平気なのかよ」
「うん、そこでお友達に待っててもらってるんだ」

隣に座ったみのりは、身長差から必然的に俺を見上げる形になる。
いやー、いつ見ても見事な美少女っぷりだな。そう思いつつ、篤志のドアホウの事を考える。

「今日は篤志んとこに行かなくていいの?」
「会長のお仕事があるのに、邪魔出来ないよ」
「ふーん」
「ね、琉生君」

そう言って、目を潤ませたみのりは慌て俯いた。

「明日も一緒に出かけられないって言われちゃった」
「へえ、珍し」
「あの人といるつもりなのかな……」
「ん?」
「何でもないよ。琉生君は明日は忙しい?」
「んー、ちょっとばかしね」
「そっか」

残念そうに笑うみのりはいじらしい。
こんなみのりを見たら、篤志のアホはホイホイ予定を反古にするんだろうな。

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