──これって、どんな関係?

ふと考えた時に、鴻江が見目麗しい男と歩いていたのを目撃した。
相手は、ネクタイの色から一学年下の一年生だと言うのはわかった。
周りに花が飛んでんのかと思うような可憐な男と、ヤツははっきり言ってお似合いで、俺はショックを受けていた。
なぜなら、俺にはどう見ても花なんか似合わないからだ。

きっと会長として一年生に接していたんだとかなんとか、無理矢理思い込もうとしていたが、一向に俺の気分は晴れることはなかった。図太そうに見えるだろうが、傷付いたりする事だってある。
そんな俺に、鴻江は留めを刺してきた。

「相変わらずだな。もっと可愛くなれよ」

ようやく二人になれたと思った時、目を細めながらヤツが俺に向けた一言は、鋭い刃となって俺を貫いた。

そして、瀕死状態となっていた俺に、鴻江は更なる追い討ちをかけてきた。

鴻江にドタキャンされて暇になった俺が見たのは、やっぱりあの可愛い一年生と一緒にいるヤツの姿だった。
一年生を見る、ヤツの穏やかな表情。あれを見たら、可愛げのない男なんかより、やっぱりああいう子の方がいいんだろうと思った。

鴻江の心変わりも、仕方ないのかもしれない。
そんな結論に至った俺は、ヤツとの関係をとっとと終わらせてしまおうと考えていた。
そんな時──。

「遠山様」

俺を呼び止めたのは、鴻江の親衛隊の隊長だった。
彼は、俺とヤツとの事を知っている。

「例の一年の事を調べました。彼と会長は幼少の頃からの顔見知りだったようです。会長には彼を調べた事を叱責されました。そして、」

隊長は痛みを耐えるように顔を歪めた。

「彼には手を出すなと。会長は──」
「わざわざありがと。俺の方はいいからさ」
「遠山様」
「それよりお前、隊員にあの一年の事を説明しに行かないとマズいんじゃねーの?」
「遠山様、会長とちゃんと話し合って下さい」
「ああ」

小さくお辞儀をしてから踵を返した彼を俺は強いなぁと思いながら見送った。

そうして俺は、鴻江が俺達の関係をハッキリさせなかった理由を理解した。
心変わりとか言う以前に、ヤツには俺に対する想いなんか、あの一年に比べたら僅かばかりしかなかったに違いない。たまには毛色の違ったのに手を出してみようとか、そんなつまみ程度だったんだ。

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