花壇には沢山の花。その中央にあるメルヘンなベンチに、大股開きでだらしなく凭れかかっている男。
学校の庭の一部であるはずのここは、この男のテリトリーなどと呼ばれている場所らしい。

飛鷹琉生。
こいつの見た目は明らかに名前負けしてる。
ネクタイの役目を全うさせず、ボタンも二個三個は開いてるのが当たり前。口にキャンディの棒を啣えながらボケッとして、鷹のイメージを台無しにする残念な男だ。
綺麗だと思っていた飛鷹の黒髪が、素のままだったらしい事には驚いたが、なんて事はない。ただ染めに行くのが面倒だからだと言う理由らしい。
ホントになんでこの男が風紀委員長様だなんて呼ばれるのか不思議でならない。

「よう、……えっとなんてったっけ?」
「アンタ、会長と仲いいんだよな」

眠そうな目でこっちを見た飛鷹に名前を聞かれたが、スルーした。
このやり取りは何度目だ。絶対に覚える気がないに違いない。

「えー、そんなアヤしい関係とかじゃないけど?」
「幼なじみだよな」
「残念な事に腐れ縁なんだよねー。えーっと、みの、みの、みの」
「稔」
「おう、そうだった! スッキリした。もったいぶらないでよミノルくん。で、どうしたの?」

俺が関わりたくないと思っていた飛鷹に会いに来たのには訳があった。

俺には恋人、らしき存在がいる。それも男、同性だ。
相手はこの学校で生徒会長様を務めるような優秀な男で、見た目も皆が皆、振り返るような見事な容姿をしている。
俺はそんな男が率いる生徒会で、補佐の仕事をしていた。

会長、鴻江篤志は男女問わずモテる。
スマートで硬質な美形の鴻江は、そこにいるだけで人間を惹き付けてしまうから、言い寄られる事も多いはずだ。
そんな男がある日、何を血迷ったのか俺を襲い、あれよあれよと言う間に体を奪っていった。

それからは、ズルズルと皆には内緒の関係が続いている。
脅されて嫌々だとか、そんなんじゃない。そんな雰囲気になっても拒まないのは、襲われた事で、実は俺も相手に好意を持っていた事に気付いたからだ。

けど、始まりが始まりだったからか、可愛げのない俺のキャラがいけないのか、そんな自分の思いを伝えられずにいた。
第一、俺は好きだとも何ともヤツからは言われた事がない。

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