会議室での出来事から翌日。
昼休みになり、拓海は水島と共に食堂に向かって歩いていた。
蓮は親衛隊のことで、橋本と一緒に生徒会室と風紀室へ行ってしまっている。

「すげ、みんな見てるし」
「……言わないでくれるかな」

物凄い大任を拝した拓海だが、その一部始終を全校生徒に見られていたことで、一躍時の人となっていた。
さすがにあからさまに拓海を見ている者はいないが、注目されているのは気配でわかる。今日はずっとこんな状態だった。

「これだけ藤沢を見てる目があったら、変なことはされないんじゃない?」
「そうかもしれないけど、逆に変なことも出来ないよ」
「ああ、ドジッ子だもんな。何もない所で転んだりしたら……、」

そう言って笑いを耐える水島を横目で睨むと、水島の後方にいる生徒と目が合ってしまい、拓海は慌て視線を戻した。

「ま、そうでなくとも平木がいれば、手を出してくる奴はいないだろうな」
「先輩、本気で親衛隊に入るつもりなのかな……」

蓮や水島の場合は、会長補佐に親衛隊がないと締まらないなどと言って、ノリでやっているようだが、平木はよくわからない。

「こっちとしては助かるんだけどな、色々と便利そうだし。さて、今日は何を食べよっかなぁ」

呑気に水島が言った。
水島といるといい意味で気が楽になる。色々悩んでしまいがちな拓海だが、そんなふうに悩んでいても仕方ないと思わせてくれる。
本当に、またこうして一緒にいられるようになって良かったと、拓海は隣で鼻歌を歌う水島を見た。


「藤沢」
「あ、河峰先輩」

食堂の入り口で、河峰に呼び止められた。津幡も一緒にいる。

「先輩方も、これからお昼ですか?」
「ああ。お前達、もう普通の席では食事をするなよ」
「普通の席、ですか?」
「生徒会や親衛隊持ちは何かと周りに影響があるからな」

そう河峰に言われて、拓海はこれからは今までとは違った生活にならざるを得なくなるんだと実感した。
今までは、ごく普通に学校生活を送っていただけに、拓海にとってはまったく未知の世界に足を踏み入れてしまった気分だ。
遥都がとても心配していた理由が分かった気がする。

そして、遥都が悲しげな表情をしていたことも思い出した。
拓海としては、遥都と一緒に仕事が出来る事は心強くもあったけれど、遥都としては、どうしてなのか悠真に近付いて欲しくないと言うのだ。

「藤沢」

拓海達を案内しながら、河峰が話しかけてきた。

「昨日は大変だったな」
「大丈夫ですよ。また蓮や水島君と一緒にいられるようになって、良かったです」
「そうか」

頷いた河峰が、穏やかに微笑む。
周囲が俄かに騒然とした。

「江利川のこと、感謝している。俺は、あいつを助けてやる事が出来なかったんだ」
「先輩……」
「もっと早く、藤沢に出会っていたかった」

河峰が言ったことは、拓海が無我夢中でやってたことを分かってくれていたんだと感じられたが、悲しい台詞だとも思った。

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