嵐がやってきた(1)ベリアルJr.は、真っ黒なプレートアーマーに黒いマントを纏っている。
そんな見るからに危険極まりない奴が、か弱くて可憐なラブリイちゃんを小脇に抱えているのだ。
よりによってラブリイちゃんをっ!
根っからのヒロイン体質のラブリイちゃんが、とてつもなく可愛らしいからって、そんなに密着するとはけしからん!!
そんなけしからん悪魔を乗せたグリフィンが、僕の五メートル程先に降り立った。
「ま、魔法使いさん……!」
「ラブリイちゃん!」
必死に僕を見つめるピンクの瞳が、涙で潤んでいる。恐怖の余り、ぷるぷる震えているラブリイちゃんがとてつもなく可愛かった!
ハァハァハァ、待っててねラブリイちゃん!
この僕がキミを助けて、その後で、たぁっぷり慰めてあげるからぁぁぁ!!
「おいっ、ベリアルJr.! ラブリイちゃんを離せ!!」
僕が叫ぶと、ベリアルJr.の瞳が、スッとこっちを見た。
血を啜ったような赤い目が、黒いアーメットの隙間からおどろおどろしく覗いている。
べっ、べつに怖くないんだからな!
ベリアルなんか、僕の魔法でケチョンケチョンにしてやる!!
「このピンクが欲しいのか、表六玉」
「僕は表六玉じゃないし、その子はラブリイちゃんだ!」
僕が訂正するのをベリアルJr.は鼻で笑う。こいつはいつも人をバカにしたような態度を取るんだ。
そんな憎たらしいベリアルJr.が、ラブリイちゃんのおとがいを掴んで顔を近付けた。
「いやぁっ!!」
「うわっ、ラブリイちゃんに近づくな!」
あわてて攻撃を仕掛けようとしてふと気付く。
し、しまったぁぁぁぁぁ!!
ベリアルJr.に攻撃したら、ラブリイちゃんを巻き添えにしてしまうじゃないかっ!!
「だからお前は表六玉なんだよ」
僕を見てそう言ったベリアルJr.は、アーメットを片手で取った。すると、豊かな金髪がふわりとこぼれ、輝かんばかりの美貌があらわれた。
元は一級天使だったベリアルJr.の容姿は半端なく美しいのだ!!
僕にとってはおぞましい美しさだが、周囲はそう感じないらしく、全てを虜にしてしまう。……何故だ!?
「あっ……!」
案の定、ベリアルJr.の容貌にあてられたラブリイちゃんは、顔を真っ赤にさせてぽやんとした表情になってしまった。
だっ、騙されたらだめだよ、ラブリイちゃん!!
そいつの見た目はああでも、中身は鬼畜悪魔なんだからね!?
そんな悪魔の手が、ラブリイちゃんの短パンから覗く、魅惑の白い太ももを撫でた。
「あっ、あっ、」
ラブリイちゃんは、ますます体をぷるぷる震わせる。
なんて、なんて卑猥な触り方なんだぁぁぁ、ベリアルJr.!!
よせっ、ラブリイちゃんの美味しそうな太ももをモミモミするなぁぁぁぁぁ!!
「ひゃぁん」
厭らしすぎるベリアルJr.のモミモミに、ラブリイちゃんはぷるぷる震えながら、意識を失ってしまった。
「変態鬼畜野郎! ラブリイちゃんに何てことをするんだ!?」
「フン、煩いぞ表六玉。お前はこんな所で何をやってるんだ」
「お前こそ、何故ここにいる?」
「間抜けな奴がヒロイン科にちょっかいをかけていると聞いてな」
「ああ、変態王子のことか」
「……お前のことだ表六玉! さっさとヴィラン科に戻れ!!」
「えぇぇぇ!? だが断る!」
赤い目がぎろりと僕を睨んだ。
こ、怖く、ないんだから……!
「では、お前の代わりにこれを連れて帰る」
「それは駄目に決まってる!!」
あんなに可愛いヒロイン科のエンジェルを、あのむさ苦しいヴィラン科に連れて行ったら、……ぐっちょぐっちょのどろんどろんにされてしまうじゃないかぁぁぁ!!
「ラブリイちゃんをデロデロにするのは、この僕だ!」
冷ややかな目でこの僕を見るんじゃない、ベリアルJr.め!!
くそっ、せっかくラブリイちゃんとウハウハ同級生ライフを送れると思ったのに!
どうして邪魔しに来たんだベリアルJr.……!?
地団駄を踏みたくなった時、バタバタと足音が近づいてきた。
「ビビッと恋の君、いや、マイハニーエンジェル、大丈夫か!?」
「うわっ、変態王子……!」
現れたのは、自分の護衛を連れた変態王子だった。
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