嵐の前のないしょ話恐ろしい。
物凄く恐ろしい出来事が、僕の身に起こってしまった!
よりによって、ヒイロにあんな、あんな破廉恥な……!!
「ヒメ?」
「ヒィィッ!!」
出たッ、赤い髪の悪魔!
こいつはヒーローの仮面を被った悪魔に違いない!!
僕は飛翔魔法を使って、空いてた保健室の窓から飛び出した。
「あっ、ヒメ!?」
保健室から逃げ出した僕が廊下を歩いていたら、麗しのマイエンジェルに遭遇した。
奇遇だね、ラブリイちゃん。こんな偶然、運命に違いない!
「魔法使いさん」
「ラブリイちゃん!」
ウルウルの大きな瞳が、ぼ、僕を見つめている。
ひび割れた僕の心が、見る間に潤いを取り戻した。
可愛いラブリイちゃんの眼差しは、瀕死状態の僕を癒してくれるのだ!
「風邪ひいちゃったって聞いたんだよぅ。大丈夫?」
「勿論だとも! キミのおかげで元気いっぱいさ!!」
ああぁぁぁっ!
不思議そうに首をかしげるその仕草も、堪らなくかわいいよ!!
「あの、王子様は……?」
「ぬ、王子様だと?」
王子様なら、君の目の前にいるのだが?
「魔法使いさんも、プロポーズされたでしょう?」
なっ!!
なんと!?
あの金髪変態王子の事かっ!
そう言えば、あいつの奇想天外な発言は、ラブリイちゃんの目の前での出来事だった……。
あの変態野郎、お前を絶対に呪ってやる!
「ラブリイ、困ってるの」
そうだろうとも、この僕以外からのプロポーズなど、迷惑以外のなにものでもないからな!
「ラブリイは、ラブリイだけを大切に思っている人がいいの。だから、王子様と一緒にお城に行きたくないの」
「当然だとも、ラブリイちゃん!」
「魔法使いさんもそう思ってたの? 一人で不安だったから、ラブリイ安心したよぅ」
パアッとラブリイちゃんの表情が明るくなった。
キラキラ輝く君は、とても眩しいよ!
「魔法使いさんと同じだね。これからどうしよう」
「ラ、ラブリイちゃん……!!」
ドクドクドクドク──
ぼっ、僕の心臓は、今にも破裂しそうだ!!
ラブリイちゃんと同じ→同じ気持ち→つまりは相思相愛……!!
「そうだともっ、僕達は同じだよ、ラブリイちゃん!! あんな変態王子なら、僕が城へ強制送還させるから安心してくれたまえ!」
「えっ、そんな事しても大丈夫なの?」
「僕達の明るい未来の為だ! 大丈夫だから僕にまかせて」
そうと決まれば、変態王子の所にこっそり殴り込みだ!!
***
ラブリイちゃんと別れた僕は、再び講堂へと足を運んだ。
合同授業の反省会と、変態王子の嫁とその騎士の発表と言う大変けしからん行事があるのだ。
ラブリイちゃんは、念のために身を隠している。
安心して待っていてくれ、未来のぼっ、僕のお嫁さん!
必ず変態王子を城へ強制送還してやるからな!!
講堂の様子を見る為に、僕はこっそり中を覗き込んだ。
そんな時、外から悲鳴が聞こえてきた。
「きゃあぁぁぁっ!! 助けてぇっ!」
こ、この声は!!
急いで外を見れば、グリフィンに乗ったメチャクチャ嫌なヤツが、空を駆けながらこちらに向かっていた。
俺様鬼畜野郎、悪魔族のベリアルJr.だ。
ベリアルJr.は、よりによってラブリイちゃんを捕まえてしまっていた。
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