ときめきの嫁候補生徒を講堂に集めたのは、金髪野郎を紹介するためだったらしい。
金髪野郎が学園に来たのは、嫁候補をヒロイン科から探すのと、ヒーロー科から嫁候補の専属ナイトを探すのが目的だと言う話だ。
……けしからん。
実にけしからん!
嫁候補とは言っても、本妻は既に崖の下の姫に決まっているらしい。
それなのに、ヒロイン科から嫁を貰おうとするとは……! なんて羨ましい!!
……間違えた! 僕はラブリイちゃん一人だけだからね!!
そう思いながらラブリイちゃんを見ると、とっても悲しそうな表情をしている。
大丈夫、ラブリイちゃんを側室にしようとする身の程知らずなヤツなんか、この僕がきっちり始末してやるから!
***
それから始まった合同授業は、雪山訓練だった。
金髪野郎が見守る中、雪山で攫われたヒロインをヒーローが助けるって言う設定だ。
そして僕はと言うと、攫われた体の山小屋で、ヒロイン科のカワイ子ちゃん達に囲まれている所なのだ!
寒さ対策に着たあったかコートからちょこんと出た指先。そして、ショートパンツと厚手のニーハイに挟まれたピチピチの太もも……。極め付けはモフモフ耳当て。
ここはどこだ、天国か!?
ちなみに、ラブリイちゃんとは違うチームになってしまい、非常に残念な事にここにはいない。
「あなた、まだいたわけ?」
「はい、そうであります!」
「ずいぶん張り切ってるみたいだけど、あなたを助けるヒーローなんか絶対にいないんだからねっ」
「勿論であります!」
むしろ、僕は今からラブリイちゃんを攫いに行くのであります!
フッフッフッフッ。
「ヒメ!!」
そんな時、山小屋のドアを蹴破り、ヒイロが現れた。
来るの早すぎ!!
ここまでくる前に、色々なトラップがあったはずなのに、どんだけ急いで来たんだよ。
「ヒイロくん!」
「ヒイロ様が来てくれた!!」
きゃぴきゃぴの歓声が上がる中、僕の元に駆け寄るヒイロ。から真っ先に逃げる僕。
「ヒメ、無事で良かった」
「当たり前だ! 無事だから近寄るな!」
……なぜ来たヒイロのヤツめ!
これではラブリイちゃんを攫いに行けないではないか!
はっ、もしかして、これはヒイロを抹殺するチャンスなのではないか?
そうだ、雪山の事故に見せかけて、お前を始末してやる!
そうと決まれば話は早い。
ヒイロから逃げ回りながら小屋の後方に向かう。それから雪の一部を凍らせて、滑りやすくしてやった。
氷となった斜面から滑って転がれば、雪山の絶壁の下へまっ逆さまだ!
「フフフフッこれでいい! って、うわっ!」
「ヒメ!?」
しまったぁぁぁ!!
僕が足を滑らせてしまったぁぁぁ!!
「ひょえぇぇぇぇ!」
滑り落ちる僕の体!
このままでは奈落の底に真っ逆さまに落ちてしまう!!
って、死ぬから! 確実に死んじゃうからぁぁぁあ!!
「ひえぇぇぇっヘルプ、ヘールプ!!」
「ヒメ!」
ぽーんと僕の体が浮いた時、しっかりとした腕に抱きかかえられた。
目の前には、見慣れたヒイロのにっくき顔。
そのままひょいっと飛んだヒイロは、無事に地面に着地したのだった。
……なんでやねん!!
「無事で良かった」
「──ヘックション!」
爽やかに笑うヒイロに、僕はくしゃみをぶちまけた。
「ハァックション!」
「大変だ、風邪かな。保健室に行こう」
「こら、姫抱きで歩くな……ヘーックション!」
くしゃみが止まらないし鼻水も出てきた。何て事だ、この僕が風邪を引いただと……?
ヒイロに姫抱きにされたまま、僕は保健室へ連れて行かれてしまったのだった。
「あれ、先生がいないな。ちょっと探して来る!」
僕をベッドに寝かせると、ヒイロは保健室からいなくなった。
「ハークション!」
「風邪を引いてしまったのかい?」
「誰だ!」
「心配で来てしまったよ。ビビッと恋の君」
ヒイロがいなくなって清々していたら、何故か金髪野郎が現れてしまった。
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