「あーあ、べたべたに甘やかしちゃって。モリヴェロ様も久しぶりにノアに会うからな」

カラムと共にその様子を見ていたベネットが、苦笑いとともに呟いた。

同じ密偵のベネットとは歳も近いこともあって、カラムとは何かとよくつるんでいる。
しかしこの男もノア擁護派、と言ってもそうではないのはカラムくらいのものだが、なので実は根本的な所で意見は合わないと思っていた。
それでも波風たたずに一緒にいられるのは、カラムが他人に合わせる事に長けているからであろう。密偵として潜入捜査で培われたものだ。
だからベネットも、もしかしたらカラムと同じように考えているかもしれない。そうだったなら滑稽だ。


この日は大きな叛乱組織を壊滅させた直後だった事と、モリヴェロ爵の帰国が重なり、騎士団も気が緩んでいた。
その隙を見事に突かれた。

始めは何が起こったのかわからなかった。
ユリエルがノアの名を鋭い声で呼んだので、振り返ったカラムが目にしたのは、血を流している少年と剣を手に佇んでいるノアの無表情な面だった。
どくどくと赤黒い血液が少年から流れている。ぴくりとも動かないのは、既に息がないのだろう。その手には子どもには不釣り合いな、重々しい銃が握られていた。
騎士たちが息を呑んで立ちすくむ中、ユリエルだけがノアへと駆け寄り、素早くノアの剣を鞘へと収めた。

おそらくモリヴェロ爵に向けられた銃口に、いち早く気付いたノアが斬り付けたのだろう。
後からノアに駆け寄ったモリヴェロ爵が困却した表情を浮かべていた。

ユリエルがモリヴェロ爵と二言三言話をした後、ノアと共にユリエルの馬に乗って行ってしまった。
こんな時に二人は帰ってしまうのだろうか。

カラムは二人のことが気がかりだった。ノアの様子に違和感がしたからだ。
連れて帰るほどの怪我をしていたなら、応急措置を施すべきだろうに、そんな様子は見受けられなかった。

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