22

「ここまで青龍に乗せてもらって来たんだぜ。黒龍を蔑ろにする国は、龍達は相手にしないのだから、ここの王族とは面識がないだろう。とは言っても、青龍と関われるのは、俺が青龍の巫覡の血筋だからだ」
「そんな事はどうでもいい。青龍がなぜアクロアに危害をもたらすんだ?」
「わからないか? アクロアが龍の怒りを買ったからだ」

ともすれば冷たい印象を受ける青い瞳が、今は一層そこに冷たさを滲ませ、じっとアリエフを見つめる。

「ではやはり、ナギが関係しているのか? 黒髪と黒い瞳の者に触れれば、黒龍の呪いを受けるとあったが」
「ふーん。それじゃあ、リンジュが枯れたのはやっぱりナギのせいだったんだ。それに、今アクロアが荒れているらしいって言うのも、きっとナギのせい」

甘い声音たが、しっかりと存在感を持ったソウタの声がアリエフの言葉に割って入る。

「違うぞ、白龍の巫覡。それはアクロアが自ら招いた罪だ。黒龍を怖れたアクロアは、真実をねじ曲げ続けていた。諸外国と交流を持たず、多少知識のある者も城に抱え込んで徹底させていたんじゃないのか? さっき庭にいた爺さんもそうだったんだろう?」
「……ビナは植物の研究のため一時期外国にいた。だが、それは城の庭師としての技術を上げるためだ」
「ふん、どちらにしろ外と関わったんだから城からは出られなかっただろうさ。王子も気付いたんだろ、黒龍についての情報の少なさに。アクロアがそうやってきたがために、結果的に黒龍の巫覡を傷付けた。巫覡の悲鳴を聞いた龍達は、悲しんだり腹を立てたりで大忙しなんだぞ」
「黒龍の巫覡? 何だよそれ。まさか、ナギが黒龍の巫覡だって言うの?」

それまで物憂げだったソウタの雰囲気が変わった。亜麻色の目で、強くロンヤオを睨む。

「巫覡様と呼べ。龍王たる黒龍の巫覡は、お前よりも尊ばれなければならないんだからな」
「龍王って何なんだよ。ただの疫病神でしょ。それに、黒龍は死んだんだから俺には関係ない」
「お前、己の立場である巫覡にも、この国にも興味はないくせに、黒龍の巫覡に対する憎悪だけははっきりしているんだな」
「何を言ってるの? この国が大切だから心配しているに決まってる。それに、黒龍がアクロアに不安をもたらした事に変わりはない」

ロンヤオを一瞥したソウタは、椅子から立ち上がると扉に向かって歩き出した。キールも静かにその後に続く。

「待てソウタ」
「アレクセイに会いに行く。アクロアに一番詳しいのはアレクセイだからね」

小さな宝石をあしらった薄絹を翻しながら、ソウタは広間を後にした。

[ 23/26 ]


[mokuji]

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -