「モリヴェロさん、お帰りなさい!」
「ただいまノア。元気にしてたか?」

ノアが心酔して止まないモリヴェロ爵が、隣国訪問から帰ってきた。
彼の帰国を心待ちにしていたノアが、碧眼を煌めかせながら飛び付かんばかりに出迎えている。
そんなノアの姿を目にしたカラムは、秘かに眉をしかめた。

ノアのその外見の秀麗さに騙されるが、彼はとんでもない悪魔なのだ。
それなのに、特定の人物の前では愛らしい姿を惜し気もなくさらしてしまう。
カラムはそれが気に食わなかった。

初めてノアを見たとき、その姿に目を奪われた。抜けるように全体的に色素の薄いノアは、顔も恐ろしいほどに整っていて、作り物なのではないかと疑った。
少女のような愛らしさに、それでもしっかり少年であって、そのアンバランスさが出す雰囲気に、妙な色気を孕んでいるのだ。
そんな存在が騎士団にいるのは、何かの間違いではないのかと思った。

しかし、その見た目を充分に裏切って、ノアの素行の悪さは目に余るものだった。
ノアは単独行動が多く、問題を起こす事も度々あった。だが、周りは平気で許して可愛がるのだ。

天涯孤独だったノアは、幼少の頃モリヴェロに拾われ、騎士として成長した。
ノアには、恩人であるモリヴェロのためなら手段を選ばない、恐ろしいくらいに冷酷無比な部分もある。
なおかつ馬の扱いや剣の腕も確かなもので、他の騎士達からは一目置かれていた。

当初、カラムは周りの高い噂はどうであれ、ノアの腕を見くびっていたのだが、その腕は噂以上のものだったのだ。
人を斬る時でさえ、他人を魅了する。
一瞬のうちに斬られた者は、何が起こったのかわからないまま死んでいく。驚きに見開いた目は、どこか恍惚としているようでもあった。
しかし、それでもカラムのノアに対する思いは、淀んだまま変わる事はなかった。

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