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ナギが目を覚ました時、とても暗い場所に閉じ込められていた。
猿轡で口を塞がれており、両手は後ろ手で縛られた上、足も動かせない状態だった。

一体、誰がナギにこんな事をしたのだろうか。
脳裏に、最後に会ったアリエフの顔が浮かんだが、彼がナギを嫌っていても、こんな事をするようには思えなかった。

暗く狭いここは、大型シェルフの中のようだったが、ここが城内のどの辺りなのかもわからない。もしかしたら、城ではないのかもしれない。
閉じ込めた人物が、このままナギを放置してしまえば、いつまでも誰にも見つけられない可能性もあるのだ。

ぞくりとナギが身を震わせた時、誰かの話し声が近づいて来るのが分かった。
身動きしづらい狭い場所で、何とか物音を立てて気付いてもらおうと思った時、耳に入ってきた会話の内容に、ナギは動きを止めた。

「ねぇエイメイ、早く抱いてよ」
「先程までアレクセイ様とご一緒ではなかったのですか?」
「ふふっ、もしかして妬いてる?」
「ええ、そうかもしれませんね」

近くにいるのは、ソウタとエイメイだった。
今、二人は口付けを交わしているらしく、それとわかるあからさまな音と、合間にソウタの甘い吐息が聞こえてくる。

ナギは呆然と横たわったまま、体から力を無くした。
とても胸が苦しい。
エイメイとソウタの関係を目の当たりにして、知らず知らずのうちにナギの瞳から涙が溢れていた。
いつも優しくしてくれていたエイメイに、ナギは自分でも気付かぬ内に思いを寄せていたのだ。

「本当はナギにもこんな事したいんじゃない?」
「どうしてそう思うんですか?」
「だって、エイメイはナギには甘いでしょう」
「それはソウタ様の大切なご友人ですからね」
「それだけ?」

ナギは、一刻でも早くここから逃げ出したかった。
二人の会話は聞きたくないのに、耳を塞ぐ事も出来ない。それなのに、無情にも二人のやり取りは続いた。

「でも、そんな事を言ったらナギが可愛そうだよ」
「ソウタ様はお優しいですね。彼に仕事を与えて、居場所を作って差し上げて」
「そうだね。俺にはエイメイがいてくれるけど、ナギには何もないから。……けど、エイメイ」
「はい、何でしょうか」
「ナギを故郷に連れて行きたいらしいじゃないか」
「……」
「エイメイ、どうなんだ? 本当は──」
「そうですよ。彼はアクロアに必要のない存在ですから」

それを聞いた瞬間、ナギはアクロアに来て初めて、心の底から強く帰りたいと思った。
自分が支えているつもりでいたソウタは、本当はナギなど必要なかったのだ。そして、エイメイにもいらない存在だと思われていたのだと知り、ナギは遂に自分の存在価値を失ってしまった。

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