ひみつのお花畑「うわぁ、きれーい!」
色とりどりの花々が咲き乱れる庭園。その中で、ピンク色の頬をますます上気させたラブリイちゃんが、感動に声を弾ませていた。
あああぁぁ可愛い、可愛いよラブリイちゃん! どんなに綺麗な花たちの中にいても、一番君が可憐で美しい!!
セーラータイプの襟元から覗く白いうなじも、ショートパンツから伸びるすんなりしたツルツルの足も、僕の心をがっちり掴んで離さない。早くデロデロのドロドロにしてほしいって、僕を誘惑しているんだよね。
待っててね、今すぐ君を僕のものにしてあげるよ!
「フ、フフフ、フフフフ……」
「こーんなに綺麗な場所があるなんて、知らなかったよぅ」
そうだろうとも。ここは君のために僕が作った異空間だからね。
君は気が付いていないだろうが、強力な結界も張ったから邪魔者は現れない。つまり、君だってもうハアハア逃げられないんだよハアハア。
僕がデロデロデロデロ嘗め回してあげるからねハアハアハア。
花に夢中になっているラブリイちゃんの背後に、そっと近づく。
華奢なうなじに向かって静かに手を伸ばしたら、急にラブリイちゃんが振り返った!
慌てて手を引っ込めて、内心の動揺を悟られないように素知らぬ顔をする。
ラブリイちゃんが、不審に思っている様子はなさそうだ。
よしよし。この僕は、演技力にも長けているから当然なんだけどね!
「ねえ、魔法使いくん」
ラブリイちゃんのピンク色の瞳がじっと僕を見つめる。
ぬあぁぁぁラブリイちゃんの上目遣いいぃぃ!! と、叫びたくなる衝動を必死で抑える。偉大な魔法使いは、常に沈着冷静でなければ。
「……何だい?」
「あのね、ここに、ヒイロくんも連れてきてもいいかなぁ?」
──な、な、な……んだと……!?
ヒイロといえば、ヒーロー科のトップスリーの一人じゃないか!?
何でそんな野郎を呼ばなきゃいけないんだ?
あり得ない、そんなのあり得ないんだからッ。
「この前、ヴィラン科の怪人ベチャベチャに、べちゃべちゃにされそうになった時に、ヒイロくんが助けてくれたんだよぅ」
ベチャベチャの野郎何してくれてんだーっ!!
怪人ベチャベチャは大きく分厚い舌で、獲物を舐めまくってべちゃべちゃにしながら魔力を吸い取る怪人だ。
くそっ、僕を差し置いてラブリイちゃんに手を出した挙げ句、ラブリイちゃんとヒーローの接点を持たせるなんて!!
今度、あいつのベロに痺れ薬をふんだんふりかけてやるからなッ。
「だから、ここでヒイロくんにお礼が言いたいの。それでね、ラブリイだけのヒーローになってくださいってお願いしたいの」
きゃっ! と恥ずかしそうに両手で顔を覆ったラブリイちゃんの隣で、僕は立ったまま気絶した。
「じゃあ、またねぇ!」
可愛く手を振って、ラブリイちゃんはスキップしながら去って行く。
ハッと気が付いた時には、ラブリイちゃんが異空間からあっさり出て行った後だった。
ちなみに、僕が気を失った瞬間に結界は消失している。
何がヒイロだちくしょー。。所詮僕は通りすがりの魔法使いくんさバカヤロウ。
「おのれ……ゆるすまじ、ヒーローめ……!」
あ、今のセリフ、悪役っぽかった。
とにかく、ぜっったいにヒイロを惨めに転落させて、ラブリイちゃんの気持ちを冷まさせてやるんだからな!
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