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こんな時に何を言いだすんだ、こいつ。

まじまじと風紀委員長を見れば、奴は至って真面目な顔で俺を見ていた。

「結斗の弟なら、それなりに少しは役に立つ力も持っているだろう? こいつを助けたいなら、俺に力を寄越せ。それに、抱けばお前に染み付いてる開東の匂いも覚えられる。開東と悪鬼を区別するには、そうするしかないだろう」

俺と朔の間にあることを匂わせる言い方だ。
兄貴の前なんだから、もっと言い方を考えてくれ。

兄貴からの視線を感じる。
別に朔とは最後までやってないし、第一あれには、朔の暴走を防ぐっていうちゃんとした理由がある。でも、今それを兄貴に説明しても墓穴を掘りそうだし、風紀委員長には朔の弱点みたいなところを知られたくない。
俺が何も言わないでいると、兄貴が口を開いた。

「……そうだよ、真緒」
「兄さん?」
「朔を助けるために、真緒も頑張ってほしい。僕とクロフォードだけじゃダメなんだ。真緒の力が必要なんだよ。このままじゃ朔が……」

意識を失ったままの朔は、顔色もまた悪くなってきた気がする。

兄貴が抑えてくれてる悪鬼だって、いつ動きだすか分からない。動きだせば、朔は再び苦しむどころか、悪鬼に体ごと力を奪われるかもしれない。そんなのは、絶対に嫌だ。

それに、さっき兄貴に言われた言葉が、痛いほど俺に突き刺さっていた。
いつも朔に助けられてばかりなのに、こんな時に何も出来ないなんて情けなさすぎる。
朔を助けられるなら、風紀委員長に抱かれるくらいどうってことないはずだ。そう思い込むことにして、俺は風紀委員長に返事をした。

「……わかった」

それを聞いた風紀委員長は、満足したように唇の両端を吊り上げた。

「時間がない。さっさと済ませるぞ」

そばに来た風紀委員長に、目の前のベッドに押しやられる。

「ちょっと待て、ここでするのか!?」
「わざわざ移動する時間が勿体ない。早くしろ」
「ここでは無理だ」
「つべこべ言うな」

力を使われたみたいで、軽くベッドに押し倒された。
一瞬、何が起こったのかわからず驚いている隙に、風紀委員長が俺にのしかかってきた。すかさず手足をホールドされて、動けなくなる。

細身に見えても、俺より背が高い風紀委員長は重い。体に乗られた息苦しさで呻いていたら、口を塞がれた。

またこいつとキスをするはめになるなんて。
首を振って抗議してるのに、奴は口内を舐め回してくる。それでも首を振り続けて、ようやく口が解放された。

「やっぱり、お前は美味いよ」

風紀委員長は、濡れた唇でニヤリと笑った。

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