31朔は、結界で姿を見えなくさせてから、俺を朔の部屋まで連れて行ってくれた。
頻繁に抱えられてるけど、未だに体が重いから仕方がないってことにしておく。
それに、生身の朔を間近で感じられて、やっと安心出来た気がするから、このまま甘えさせてもらった。
「ところで、朔が放った悪鬼は、どのくらいで消えるんだ?」
「彼らの力の吸収率にもよります。間もなく鏡見家の者が彼らの元に到着するので、意識を失ってもそのまま死ぬことはないでしょう」
「そっ、そうなんだ。……ていうか、うちに連絡しちゃったのか!?」
それってめちゃくちゃ恥ずかしいじゃないか! 拉致された上に襲われたって、親父たちにバレてるってことだろ!?
「真緒様との条件を確実に彼らに守らせなくてはなりません。真緒様に手を出した以上、家の者が動くのは当然のことです。それは、高社家のためでもあります」
「うん、わかってる」
家に帰った時に、俺が悪鬼と接触したってすぐにバレるだろうから、下手に隠してたままだったら問題が大きくなる。
本当に退治屋の一族同士って、面倒だと思う。
朔の部屋に到着して、相変わらず豪華な部屋のフカフカなソファーに落ち着いた。朔がすぐに温かい紅茶を出してくれる。
蜂蜜の入った甘い紅茶を飲んでいると、急に兄貴のことが気になりだした。朔を探して、また一人で出歩いてたら危ないし。
「朔、兄さんは大丈夫?」
「結斗様でしたら自室でお休みになりました」
「えっ、まだ体調が悪かったの? 目が覚めた時に朔がいなかったら心配するんじゃないのか?」
「しばらくはお目覚めにならないでしょう」
「兄さん、そんなに具合が悪かったんだ……」
「いいえ、大丈夫ですよ」
ゆったりと微笑む朔を見て、ひとまず安心する。
まあ、本当にヤバかったら、朔だってこんなに落ち着いていないだろうから、心配するほどでもなんだろう。
紅茶を飲み干すと、近付いてきた朔が俺からカップを取り上げる。それをローテーブルに置いたと思ったら、また俺を抱き上げてしまった。
「あ、おい朔!」
「お湯を張りましたので、体を清めましょう」
「……うん」
たしかに、ローションやら何やらでドロドロだし、色々触られまくったし綺麗にしたい。
「俺、一人で入れるから」
何となく嫌な予感がして、取り敢えずそう言ってみる。
朔はそんな俺を見て、今日一、極上の笑みを浮かべた。
「消毒と手当てがまだだったのに、清めまで必要になりましたね」
朔の笑顔に見惚れているうちに、バスルームに連れ込まれてしまった。
目の前で、さっさと裸になった朔は、俺に貸してくれた朔自身の上着に手をかける。とっさに両手で上着を押さえると、朔は笑顔のまま俺をじっと見つめてきた。
胸がバクバク煩い。朔に触ってもらえるっていう期待でだ。でも、朔の前で脱ぐのは、そんな下心がバレそうだし、何より恥ずかしい。
葛藤している俺の顔に、朔が近づいてきて、思わず目を瞑る。唇と思しき柔らかいものが、俺の頬を撫でるように動いて息を詰めた。
パクッと耳朶を食まれたすぐ後には、隙をついた朔によって裸に剥かれていた。
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