ひっそりと佇む、掃き溜めのように捨て置かれた廃墟。
がらくたの山と化したここは、あちこちが崩れ、陰々とした場所を好む者の不法侵入が後を絶たない。
カラムは月明かりに照らされている、崩れかけた建物を静かに見上げた。

ここは以前、名のある貴族が住んでいたが、叛乱組織の襲撃に遭い全てが打ち壊された場所だ。
気配を消して、カラムは中へと侵入した。


ボロボロになった部屋の中央。そこだけ真新しいベッドが置かれている。

縄で後ろ手で拘束され、両足もまとめて縛られ、口をしっかり塞がれた状態のノアは、鋭い瞳で歩み寄るカラムを睨み付けた。
引き裂かれた服の上着からは、白い肌があらわになっている。
ノアが転がされたベッドへ腰掛け、カラムはその白い肌に手を伸ばした。

「痕が残ってますよ」

肩を片手で抑えるだけでノアの動きを封じ、もう片方の手は、滑らかな肌にある赤い鬱血の痕を辿った。

「どれがユリエル様が残したものか、わからなくなりましたね。どうです?仲間に裏切られた感想は」

カラムの指が、淡い胸元の突起に滑る。揺れる身体を愉しんで、弄んだ。

「知らないでしょう、あなたが周りからどんな風に見られているのか。別に興味なんかなかったんですよね。そのくせ無防備に擦り寄ってみせて、弄んで楽しかったですか?」

そう言ってカラムはノアの頬に触れる。
勢いのいい強い碧眼は、カラムを睨んで逸らされることはなかった。

「だから、あなたのその綺麗な瞳に、自分の存在を植え付けたくなるんですよ」

カラムは短剣を取り出すと、ノアの首筋に棟を滑らせた。白い肌に赤い筋がうっすらと浮かび上がる。
カラムが剣を見せても、ノアの瞳の強さは変わらなかった。

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