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浄化師の力は、その血に宿る。
浄化師を見分けることは、力を使っている現場を見ないかぎり、通常では不可能だ。

「浄化師……」

眩しい光に包まれて、キラキラ輝いている高社君が、呆然と呟くように言った。

けど、そんな反応も無理もないのかもしれない。
浄化師なんてもん、生きてるうちに出会うことの方が珍しいって聞いた。

大昔は、数こそ多くはなかったものの、珍しくもない存在だったらしい。
けれど、浄化師の特別な力を欲しがる奴らに誘拐されたり、恐れられて殺されたりして、その存在を減らしていった。

普通、呪術師たちは、悪鬼そのものの存在を消滅させてしまうことで退治している。
浄化師の場合は悪鬼つくるもの、ドロドロとした怨念なんかを浄化させる。だから、綺麗になった悪鬼のもとが、再び輪廻の流れに戻ることができるって言われてる。その辺、本当かどうかは知らないけど。

でも、その力だけが浄化師を特別にしたわけじゃない。
浄化師は、ある程度の悪鬼なら、自分の思い通りにすることができる。さらに、己の血液や体液を与えれば、それは確固なものとなる。悪鬼に力を与えることも可能だった。
それは、とっても恐ろしい能力だと自分でも思う。

俺は、自分の血に流れる浄化師の力が怖かった。
それが変わったのは、俺が朔を見つけてからだ。

「なっ、なんで、僕たちまで光ってるの!? 力が抜けていってる!!」
「これでも精一杯制御してる。けど、高社君たちの力も浄化されるのは、時間の問題だろうね」
「どうして僕たちの力までっ?」

自分から呪術師の力が無くなっていってるって感じるのか、高社君は震えながら自分の体を抱きしめている。
力が強ければ、それを実感するのが顕著になる。他の呪術師は真っ青になったり、体の力まで抜けたのか蹲ったりしていた。

俺の浄化の力は、なぜか悪鬼だけにとどまらなかった。呪術師たちのような、悪鬼を退治する力まで浄化させてしまう。
修行したからある程度はマシになったけど、俺の力を押さえられる結界がないと、こうして周りの人たちに影響を及ぼしてしまう。

「俺が力を使う時は、いつも朔並みの能力者に結界を張ってもらってる。今、高社君たちにそんな能力者はいる?」
「無理だよ……! 力が抜けて行ってるし、さっきから試してるのに、すぐに消えちゃう!!」
「じゃあ、諦めな」

俺がそう言うと、高社君は目を見開いて唇を震わせた。

「……駄目だよ。お願い、許して。せめて、この人たちだけは。僕が無理矢理お願いしたんだ。ねえ、お願いだから……!」
「無理矢理? そのわりには、みんな手慣れてたみたいだけど。この悪鬼を使って人を襲うのは、初めてじゃないよな? ずいぶんとエグイことやってるみたいだし、そんな奴らには、呪術師の力は必要ないと思う。よく考えてみなよ。今まで襲ってきた人たちも、そいつらに助けてって言ってたんじゃないの? それをお前たちはどうしたんだ?」

高社君は、見開いた目から涙をポロポロと流していた。
それでも、呪術師たちを助けてって、俺に懇願してる。

悲壮感漂わせる美少年が、涙ながらに許しを乞う。……それを平然と眺めてる俺って、端から見たらどうなんだ?

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