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すぐに聞き覚えがある声がした。

「目が覚めたんでしょう? もしかして、怖くて目が開けられない? 真緒君」

名前を呼ばれてゆっくり目を開けると、少し離れたところに高社君が立っていた。

高社君の左右には、狩衣姿の若い男達が四人。彼らは高位の術者なのかもしれない。

「この人たちは、うちの一族の優秀な呪術師だよ。将来は僕も彼らと一緒に仕事をする予定だから、よろしくね」

高社君が、いつも通りの調子で、ごく普通に紹介した呪術師たちは、観察するような視線を俺に向けている。

俺をこんな状態にしたのは、きっとあの人達なんだろう。
せめて、ビリビリのシャツはなんとかして欲しかった。乳首が丸出しだと、ひんやりした部屋では地味に寒い。

「いきなりこんな所にいて、びっくりしてるでしょ? 実は、真緒君に見せたいものがあるんだよね」

そう高社君が言うと、呪術師の一人が詠唱を始めた。
俺のそばに結界が現れて、その中に黒いもやが集まりだした。そこから悪鬼の気配がする。

……もしかして、悪鬼を召喚してんの!?

もやの黒い影が濃くなって、なんだかすごく嫌な感じになった。
だって、これって……。

「これがなんだか知ってるみたいだね。うちで飼っているんだけど、真緒君に使ってあげようと思って連れてきたんだ」

やっぱり、そうなるよね。

力が強い悪鬼の中には、種族保存本能みたいなものをもつ奴らがいる。
その方法は様々だけど、悪鬼自身の力を遺そうとするために、人間に力を植え付けたりすることがある。

力が欲しい人たちの中には、それを利用して、自分から悪鬼の力を取り込もうとすることもあるらしい。
けど、それはすごく危ない方法だ。悪鬼に近づかれれば、体にも精神にも悪影響があるんだし。

ここに呼び出されたのも、人間に自分の力を無理矢理植え付けるタイプの悪鬼だった。

「力がない真緒君に、こいつから力をプレゼントしてあげる。そうしたら、みんなから認められるかもよ。でも、真緒君が悪鬼と交わって能力をつけたって知ったら、会長様たちはどんな顔をするかな?」

高社君が近づいて来て、俺のあごを持ち上げた。
俺を見る高社君の表情は、これまでにないくらいに冷たかった。

「真緒君がちょっかいかけてるのは、会長様や開東様だけじゃないよね。この、首にあるキスマークは、誰が付けたの?」

キスマーク?
そんなものがついてるとしたら、さっき乱暴に吸いついてきた風紀委員長が犯人だ。

「知ってる、クロフォード様でしょう? あの人まで誑かすなんて、本当に許せないよね、真緒君」

えっ、クロフォードって、風紀委員長?
なんで犯人が風紀委員長だと、高社君が怒るわけ?
高社君て、一体誰のことが好きなんだろう。

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