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高社君の大きな目が、これでもかってくらいに釣り上がってる。
俺といえば、未だシーツに包まったまま、ソファーの上で縮こまっていた。

「まったく、そんな格好で一体なにしてたわけ?」
「別に露出癖があるとかじゃないよ」
「そんなことは、わかってるの!」

糺谷はすでに逃亡済みだ。
俺をソファーまで運んだ後、仕事があるからってそさくさと帰ってしまった。こんなところで見捨てるなんて、酷いと思う。

「どうせ親衛隊に何かされたんでしょ? また噂が流れてるし、けっこうみんないきり立ってる感じだったけど」
「心配かけてごめんね、高社君」
「別に心配なんかしてないし! 真緒君がどんな目にあったか、この目で見てみたかっただけなんだし」
「えーっ」

高社君、何だかんだ言ってるけど、今日の授業のノートとか持ってきてくれてるんだよね。
それに、わざわざ俺にお茶まで淹れてくれたし。

「……でも、すっごく眠くなってきた」

お茶を飲んでほっとしたせいか、急に眠たくなってしまった。
強い眠気に引きずられて、まぶたが落ちてくる。

何度も目を擦っている俺を見て、高社君がおかしそうに笑った。

「だってそのお茶、眠り薬が入ってるんだもん」

やっと可愛い笑顔を見せてくれたと思ったら、なんだか怖いことを言ってる。
ちょっと待て、今日は訳のわからない薬を多用させられてるけど、俺の体は大丈夫なのか。
ひどい副作用があるのはやめて欲しい。

「抵抗は、するだけ無駄だよ」

高社君の言う通り、眠り薬は強力だったみたいで、襲ってくる強い眠気にはあらがえなかった。




◇◇◇




ひんやりした空気が、頬を滑って流れていく。
その感触に、ふと意識が戻ってきた。

……俺、どうしたんだっけ?
椅子に座ったまま、体の動きを封じられてるんだけど。
おまけに、口に式札が張りついてるんだけど……。

なにがどうなったら、こうなるわけ?

術で動けなくさせてるくせに、椅子の背もたれの後ろで両手を縛る念の入れようだ。
口の式札は、呪術を使えなくさせるものだろう。
俺を警戒してるってこと?

ただ、確信を持って言えるのは、俺にとって今日は厄日だってことだ。
踏んだり蹴ったりってのは、まさにこういうことを言うんだろうな。

蝋燭の明かりだけの部屋は、窓がなくてコンクリートがむき出しになっている。
地下室っぽいこの部屋には、ドアは一つだけしかなかった。

しばらくすると、そのドアが開いた。
それからすぐに明かりがついて、俺は眩しさに目を閉じた。

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