拠点では、先ほどの襲撃について話し合われていた。

「俺たちの情報が漏れてた可能性もあるよな」
「あのタイミングで襲撃したのは、俺たちの行動を把握していたからだろ」
「この中に、スパイがいるって言うのか?」

モリヴェロ爵の言葉に、この場にいたみんなが口を接ぐんだ。
誰も仲間を疑いたくないのは当然だ。

顔を顰めているモリヴェロ爵の隣で、ユリエルが涼やかなグレーの瞳で皆を見回している。
何事もなかったように平然とした様子のユリエルだ。数時間前までは華奢なノアを組み敷いていたとは思えない。
ノアの方は白い顔がいくぶん青ざめて見えるが、後はいつも通りのようだった。カラムが感じた違和感は、今はまったく感じない。

モリヴェロ爵は知ってるのだろうかと思ったが、それはないだろうとすぐに否定した。
いつから二人はあんな関係だったのだろう。ノアがユリエルの従騎士だった頃からだったなら、それなりに長い。

「わざわざ、あんな子どもを刺客にした理由はわかったのか?」
「これからです。今後、潜り込んだ鼠の調査は俺とカラムが担当します」

モリヴェロ爵の問いに、ユリエルが答えた。
早々に話し合いを終わらせようとするユリエルだが、それまで黙っていたノアが口を開いた。

「ちょっと待ってください。それなら俺に任せてくれませんか?」
「何故だ?」
「俺のほうが色々と身軽だし、身内を調べるなら、あんたより俺のほうがマシだと思いますが」
「却下だ。取り敢えず今は大きな組織を潰したばかりだから、俺にも余裕ができる。それに騎士団のことなら、ノアよりカラムが適任だろう」
「そうだな。ノア、後はユリエルたちに任せよう」

暫くユリエルを見ていたノアだったが、それ以上は何も言わなかった。
ノアが、黙って大人しく引き下がったわけではない。当人以外のメンバーは、みんなそう考えているんだろうとカラムは思っていた。

案の定、この件に関してノアに情報を漏らすな等々、ユリエルより命令を申し渡された。
感情に走ってしまうだろうノアが邪魔なのか、それともその身を案じているのか。
自分の感情を隠す事に長けているユリエルから、それを読み取る事は難しいが、おそらく後者だろうとカラムは思っている。

ユリエルはとっくに気付いているはずだ。
モリヴェロ爵ではなく、狙いがノアにあるから、犯人はあの少年を送り込んだのだ。

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