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風紀委員長の部屋から出ると、朔が俺たちの周りに結界を張った。
これで、俺が姫抱っこされてるのが見えなくなってるはず。

「真緒様、お迎えにあがるのが遅くなってしまい、申し訳ありません」

朔が謝ってきた。
わざわざ助けにきてくれたのに、なに謝ってんだよ。
けどな、それとは別のことで、俺はものすごく腹が立っているんだ!

「朔のバーカ、アホ、まぬけ! ムッツリスケベ!!」
「ま、真緒様?」
「俺を部屋に運んだら、朔はさっさと帰れよな!」

あ、けど、そしたら朔は、兄貴のそばに行っちゃうんだった。

「真緒様」

立ち止まった朔が、眉をひそめて俺を見る。

「なぜそんなことを仰るんですか? あの男に何か言われましたか?」
「朔が! あ、兄貴とエッチなことしてて……、それを見ちゃったんだよ!!」

ダメだ、あれを見たダメージが今ごろきた。
涙目になりそうなのをぐっと堪えて、朔をにらんだ。

「真緒様は、あれを見たんですね?」
「何のことか知ってるのかよ」
「俺が結斗様と……」
「わーっ! それ以上言うな!!」
「隠し撮りしているのは知っていましたよ」
「えっなんで? 黙って撮らせてたの?」

お前、あんなのこっそり撮られてて平気なのかよ!?

「あれは、大した行為ではありませんでしたし、カメラはそのままにしていました」
「な、なんだよ、それ」
「儀式のようなもので、一度きりです。二度はありません」

淡々としている朔に、言っていることは本当なんだってわかった。

……でも、兄貴は違うだろ。
あんなふうに朔の名前を呼んでたのは、朔のことが好きだからだ。
だから俺が邪魔で、隠し撮りしたのをわざわざ見せてきたんだろ。
それなのに、朔はあれを何でもない行為だって言う。

朔は、俺としてる時もそういうつもり?
そう聞こうとしたけど、できなかった。

だって、俺と朔だって恋人でも何でもない。
真緒様とだって、何でもないですよ、なんて簡単に答える朔を見るのが怖かった。

「何のための儀式だったんだよ?」
「それは、言えません」

なにー!? 怪しさ倍増なんだけど。
本当に儀式だったのか、疑いたくなる。一体何なんだよ。

「それより真緒様、クロフォードに何をされましたか? 部屋に帰って、消毒をしなければなりません」
「えっ? ……や、やだ」
「いけませんよ」
「大丈夫だから、いらない」

今こんな気持ちで、朔と一緒にいるのは嫌だ。
兄貴のことも考えたかったし、もう少し時間が欲しい。
けど、朔は拒否した俺を姫抱っこから降ろした。

……あれ、もしかして、嫌われた?

びっくりして朔を見上げたけど、足がふらついて倒れそうになる。
それを支えたのは朔だ。俺の後頭部と腰にがっつり朔の腕が回ってる。

朔の顔が真正面なんだけど。
頭が動かせないから、見下ろす黒い朔の目から、逃げられない。

「なぜですか? あの男にされたことは、もしかして嫌ではなかったんですか?」
「そんなわけないし」
「なら、消毒と手当ては必要ですね?」

なんかメニューが増えてね?
とか思ってたら、朔の名前を連呼する声が聞こえてきた。

「朔、朔!! 朔、どこ?」

兄貴の声だ。

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