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理事長室がある辺りは、どこかの高級ホテルみたいな雰囲気だった。もちろん、理事長室の中身も。

そんな場違いなところで、地位も能力も高い大人たちを前にして、落ち着いていられるか?
いや、無理だろ。
朔を帰さなきゃよかったって、ちょっと後悔してる。

「本当に真緒様は存在していらっしゃったんですねぇ」

キラキラした理事長の秘書が言うと、渋系な理事長がうなずいた。
幻の生物を目撃しちゃったような反応をされてる。

「あの結界は、開東君だったね?」
「はい」
「彼も素晴らしい。君たちのような生徒は、本当に誇りに思うよ」
「ありがとうございます」

朔が誉められるのは、単純に嬉しい。
急に元気に返事をした俺に、渋系理事長は微笑んだ。

「あの何重もの結界のおかげで、退魔師達にも影響はありませんでした。ただ、突然高ランクの悪鬼が消失したことを不審に思っているようです。退魔師へは、討伐したのは理事長や教師たちだと説明していますが」

丁寧に話しをしてるのは、国家退魔師のお偉いさん。実家で何回か会ったことがある。
スーツ姿はエリートサラリーマンみたいだし、歳も三十代前半くらいに見える。それでもって、かなりすごい人だ。

「真緒様、やはり我々のところに来てはいただけませんか?」
「いやー、それは……」
「おいおい、駄目だよ綴木君」
「そうですよ! 彼はまだうちに入学したばかりなんですからね」
「わかっています」

俺を見るたびに退魔師に勧誘してくる綴木さんだが、今回は理事長と秘書にまで拒否られて、困ったように笑っている。
それから綴木さんは、俺を見て表情を改めた。

「真緒様。鎖の森の結界のほつれですが、やはり意図的なものだったようです」
「誰かがわざとやったってことですか?」
「おそらく」
「考えたくはないが、ここの関係者、あるいは生徒である可能性が高い。もしかしたら、真緒君について何か情報を掴んでいて、それを確かめようとしていたのかもしれない。真緒君のことは完全に伏せてあるはずだが、どこかで情報がもれていた可能性もあるからね」
「犯人は情報はつかんだけれど、詳しいところまではわからなたのでしょうね。だからあんな無茶なことをしでかした」
「そんなことのために、結界を破ったんですか? 下手すれば大変なことになってたかもしれないのに」

高社君が悪鬼に襲われそうだった場面を思い出す。あれは危険な状況だった。
結界を破ったやつは、俺が何もできないでいたら、どうするつもりだったんだろう。

「真緒様の力はみんなが欲しがるものです。可能性があるなら、確かめたくもなるでしょう」
「だからって……」
「開東君が結界で目隠しをしていたとはいえ、一度に悪鬼が消えたとなれば、相手は何かしら確信を持ったかもしれないね」
「我々は内密に結界を破った者を捜査していますが、犯人が誰であるのか、またその意図もわかっていません。真緒様、くれぐれもお気を付けください。」

えーっ。
入学したばかりなのに、平穏な学生生活がどんどん遠退いていってる。
結界を破ったやつ、許さん。
後先考えてないようなやり方も気になるし、早く見つかればいいんだけど。

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