14起きたら朝だった。
しかも、俺が寝ていたのは豪華なベッドで、目の前には朔のドアップが……。
ちきしょう、なに朝から爽やかにイケメンなんだよ。
「おはようございます、真緒様」
「ちかい、朔」
「なかなか目を覚まさないので、息をしてるのか確認していたんです」
そう言いながら、俺から離れていった朔は、もうしっかりと制服を着てた。
「息してるし!」
「冗談です。真緒様のお口から流れる雫を拭おうとしていました」
「そんなんいらんし! しかも普通によだれって言えよ」
てか、そっちが冗談だよな?
くそう! 朝っぱらからおちょくりやがって。
「あんまり擦っては、口元が赤くなってしまいますよ」
「いいんだよ。それより今何時?」
「まだ時間は早いです。朝食ができたので食べましょう」
「えっ? 作ったの?」
てか、いつから起きてたんだよ。全く気付かなかったんだけど、わざわざ気配殺して朝食作り?
俺が寝てたから? って思ったら、たった今おちょくられたことも見事にスッ飛んだ。
我ながら単純だと思う。
「いただきます!」
テーブルに並んでいるのは和食だ。味噌汁と、焼き魚のいい匂いにつられて、お腹がなる。
朔のご飯は久しぶりだ。
それにしても、この部屋にキッチンまであったことに驚いた。
あ、でも兄貴の部屋にもあったっけな、そういえば。俺と一緒で、料理は壊滅的なのに。
朔に聞いたら、この階の部屋にはみんなついてるらしい。
ここにいる人たちは、食堂で食事をして、騒がれるのが煩わしいと思ってるような生徒が大半だからだと。いろいろと大変なんだなぁ。
「たくさん召し上がってください。昨日は夕食を食べそこねてしまいましたからね」
「ぶっ……!」
爽やか過ぎたから、そのまま乗っかってやり過ごそうと思ってたのに。しっかり思い出しちゃったじゃないか!
今、俺の目の前で平然としている朔が、昨日はあんな、あんな……、
「真緒様、どうかしましたか?」
「べべべつに!」
「もしかして、まだ足りませんでしたか?」
見ないようにしてたのに、思わず顔をあげたら、朔の瞳とぶつかった。
俺を見た黒い目が、ゆっくりと細まる。
「さ、朔?」
「俺もまだまだ欲しいんです」
「えっ!?」
「お茶が。新しいものを淹れますが、真緒様は?」
「いらない! 朔だけどうぞ!!」
涼しい顔で立ち上がる朔を俺は恨みがましく見送った。
からかってるのか? そうなのか!?
くそーっ、自分だけ平気な素振り見せやがって……!
いつも俺ばっかり意識してる。やっぱり、朔にとってはあんなこと、取るに足らないことなんだろうな。
「食事がすんだら、一緒に理事長室に向かいましょう」
「なんで? ああ、昨日のことか」
「はい。実戦の授業で真緒様がご活躍されたことについて、話しがあるようです」
「マジか……」
「理事長は大丈夫ですよ」
「うん」
理事長は俺のことを知っている。
でも、やっぱり気は重いよなぁ。
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